簡易版・資金繰り表の作り方|3か月先の現預金を月次で予測する

簡易版・資金繰り表の作り方|3か月先の現預金を月次で予測する

横浜市で中小企業の経営者コーチングと税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「資金繰り表を作ったほうがいいと言われたが、作り方が分からない」「一度作ったが、毎月続かない」「金融機関から資金繰り表を求められた」――資金繰りに不安があるのに資金繰り表を作ったことがない経営者は、実はとても多くいらっしゃいます。資金繰り表は精密な会計の知識がなくても作れます。必要なのは「3か月先の月末に現預金がいくらあるか」を、入金と出金の見込みから引き算で出すことだけです。

この記事では、簡易版の資金繰り表(月次・3か月先)の項目とフォーマット、入金・出金の見込みの立て方、30分で作る手順と更新のタイミング、資金が足りなくなる月の対処、金融機関に見せるときのポイントを解説します。本記事は2026年11月6日時点の内容です。利益と現金がズレる仕組みは「売上は伸びているのにお金が残らない理由」をご覧ください。

簡易版・資金繰り表の項目とフォーマット

横に「当月・翌月・翌々月(+その先)」の月を、縦に次の項目を並べます。ExcelやGoogleスプレッドシートで、この項目をそのまま行にすれば完成です。

項目当月翌月翌々月
前月繰越(月初の現預金)   
【収入】現金売上・即時決済の入金   
【収入】売掛金の回収(請求済み分)   
【収入】売掛金の回収(見込み売上分)   
【収入】借入・補助金・還付金など   
収入合計   
【支出】仕入・外注の支払い   
【支出】給与・役員報酬・社会保険料・源泉所得税   
【支出】家賃・水道光熱費・通信費などの固定費   
【支出】借入金の返済(元本+利息)   
【支出】納税(法人税・消費税・固定資産税など)   
【支出】賞与・設備投資・その他の臨時支出   
支出合計   
収支差額(収入合計-支出合計)   
翌月繰越(前月繰越+収支差額)   
最低残高ライン(月商の1か月分など)   

この表をそのまま使える雛形(Excel)を用意しました。黄色の欄に金額を入れるだけで、収入合計・支出合計・翌月繰越が自動で計算され、翌月繰越が最低残高ラインを下回る月は赤く表示されます。架空の会社の記入例と、使い方のシートも入っています。Googleスプレッドシートでも開けます。
簡易版 資金繰り表の雛形をダウンロード(Excel・約20KB)

ポイントは、損益計算書と違って「発生した月」ではなく「お金が動く月」で記入することです。3月に請求した売上が5月に入金されるなら、5月の収入に書きます。借入の元本返済や納税、設備の購入代金は費用ではありませんが、お金が出ていくので支出に書きます。減価償却費はお金が出ていかないので書きません。

資金繰り表の翌月繰越の出し方

損益計算書と違い、「お金が動く月」で記入します。

前月繰越(月初の残高)すべての口座の残高と手元現金の合計を、月初の現預金として「前月繰越」に書きます。
収入を入金月に書く現金売上、売掛金の回収、借入・補助金・還付金などを、実際に入金される月に書きます。
支出を支払月に書く仕入・人件費・固定費に加え、借入の元本返済、納税、設備の購入代金も書きます。減価償却費は書きません。
翌月繰越を確認する前月繰越+収入-支出で翌月繰越を出し、3か月先まで最低残高ラインを下回らないかを確認します。
下回る月が3か月前に分かれば、入金の早期化や借入の相談など、どの方法も選べます。
本文の説明を図にまとめたものです。

入金・出金の見込みの立て方

  • 売掛金の回収:すでに請求した分は、取引先ごとの回収サイト(月末締め翌月末払い、翌々月払いなど)に合わせて入金月に入れます。これから売る分は、月ごとの見込み売上にサイトを当てはめて入金月をずらします。見込み売上は控えめに(直近3か月の平均か、受注が見えている分だけ)置きます。
  • 仕入・外注の支払い:受け取った請求書の支払期日と、見込み売上に対応する仕入れを原価率で見積もります。
  • 人件費:給与は毎月ほぼ一定なので前月の実績を使います。社会保険料は翌月末の引き落とし、源泉所得税は原則翌月10日(納期の特例なら7月10日と1月20日)、賞与は支給月にまとめて入れます。
  • 固定費:家賃・光熱費・通信費・保険料・リース料は前月の実績をコピーし、季節で変わるもの(光熱費)だけ調整します。
  • 借入金の返済:金融機関の返済予定表から、元本と利息の合計を毎月転記します。複数の借入があれば合計します。
  • 納税:法人は決算日から2か月後の法人税・消費税、中間納付(法人税は決算日から8か月後、消費税は前年の税額により年1〜11回)、固定資産税(横浜市は4・7・12・2月)、労働保険料(7月、分納なら7・10・1月)。個人事業主は3月の所得税・消費税、6・8・10・1月の住民税、7・11月の予定納税、8・11月の個人事業税です(「個人事業主の1年の納税スケジュール」)。納税額の見込みは税理士に確認します。
  • 臨時支出:設備の購入、車検、更新料、保険の年払いなど、分かっている大口の支出を該当月に入れます。

30分で作る手順と更新のタイミング

  • ① 月初の現預金残高を書く(2分):すべての口座の残高と手元現金の合計を「前月繰越」に入れます。
  • ② 請求済みの売掛金を入金月に並べる(10分):請求書の一覧(会計ソフトや請求書ソフトの売掛金一覧)から、取引先ごとの入金予定月に金額を入れます。
  • ③ 支払予定の請求書を支払月に並べる(5分):受け取った請求書の支払期日ごとに金額を入れます。
  • ④ 固定費・人件費・返済を前月からコピーする(5分):前月の通帳の引き落としを見ながら転記します。2回目以降は前月の表をコピーするだけです。
  • ⑤ 納税と臨時支出を入れる(5分):納税予定表と、分かっている大口の支出を該当月に入れます。
  • ⑥ 見込み売上の入金と対応する仕入を入れる(3分):控えめな見込みで、翌月以降の収入と仕入を埋めます。
  • ⑦ 引き算して翌月繰越を出す:3か月先まで翌月繰越が最低残高ラインを下回らないかを確認します。

更新は月1回、月初に前月の実績(実際の残高)を入れて、1か月先を追加する形で行います。大口の受注・失注、設備投資の決定、借入の実行など、お金の動きが変わる出来事があったときは、その都度見込みを直します。「作る」より「毎月直す」ほうが大切で、実績と見込みの差を見ることで、見込みの精度が上がっていきます。

資金が足りなくなる月の対処

3か月先に翌月繰越が最低残高ラインを下回る月が見えたら、次の順で対処を検討します。3か月前に分かっていれば、どの方法も選べます。

  • 入金を早める:請求の早期化、回収サイトの短縮交渉、前受金・着手金の設定、滞留している売掛金の督促。
  • 支出の時期を調整する:仕入先・外注先への支払条件の相談、設備投資の時期の見直し、賞与の支給時期の検討。
  • 借入で手当てする:運転資金の借入、当座貸越や手形貸付などの短期融資、既存借入の借換えによる返済額の軽減。金融機関への相談は、残高が尽きる前に行うほど条件が良くなります。
  • 納税の猶予を申請する:一時に納付できない事情があれば、納税の猶予や換価の猶予を税務署に申請できます(「国税を一度に払えないときは?」)。社会保険料も年金事務所に納付の猶予を相談できます。
  • 役員報酬・経費の見直し:役員報酬は期中に自由に下げると定期同額給与の要件に影響するため、税理士に相談したうえで検討します。

(仮定例)3月決算の会社で、5月の納税月に残高が不足する場合

3月決算の会社が、4月初めの現預金1,200万円、毎月の入金900万円、納税以外の支出850万円と見込み、最低残高ラインを月商1か月分の900万円に置いたとします。法人税と消費税の確定申告・納付の期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内なので、5月に納税500万円を入れます。

翌月繰越は4月末1,250万円、5月末800万円、6月末850万円となり、5月と6月がラインを下回ることが4月初めの時点で分かります。この場合、4月中に請求の早期化や設備投資の時期の見直し、金融機関への早めの借入相談を検討できます。実際の事例ではありません。

出典:法人税法(e-Gov法令検索)第74条・第77条、消費税法(e-Gov法令検索)第45条・第49条

金融機関に見せるときのポイント

  • 実績と予測を分ける:直近3〜6か月の実績と、今後6〜12か月の予測を並べ、どこからが予測かを明示します。
  • 見込みの根拠を添える:売上の見込みには受注状況や契約、過去の実績との比較を、支出には返済予定表や納税予定を添えます。根拠のある控えめな数字のほうが信頼されます。
  • 資金使途と返済原資を示す:借入の申込みでは、「いつ、何に、いくら必要で、どの利益・入金から返済するか」が資金繰り表から読み取れるようにします。
  • 最低残高ラインと不足月を隠さない:不足する月が見えているからこそ借入の相談をしている、という説明が最も自然です。
  • 月次試算表とセットにする:資金繰り表の数字が試算表の売掛金・買掛金・借入残高と整合していると、信頼性が高まります(「試算表の見方|経営者が毎月チェックする5つの数字」)。

当事務所の経営者コーチングでは、初回の資金繰り表を一緒に作り、毎月のセッションで実績と見込みを更新しながら、不足月への対処を経営者ご自身が決められるようにサポートしています。顧問契約の有無にかかわらずご利用いただけます(経営者コーチングのページ)。創業時の融資で求められる資金繰りの考え方は「創業融資の基本|日本政策金融公庫・横浜市の制度融資、創業計画書で見られる数字」で解説しています。

まとめ:「お金が動く月」で入出金を並べ、3か月先の繰越を毎月確認する

簡易版の資金繰り表は、前月繰越+収入(現金売上・売掛回収・借入)-支出(仕入・人件費・固定費・返済・納税・臨時)=翌月繰越を、3か月先まで月ごとに並べたものです。損益と違い「お金が動く月」で記入し、減価償却は書かず、返済元本・納税・設備投資は書きます。請求済み売掛金の入金月、返済予定表、納税予定、前月の固定費をもとに30分で作れ、月初に実績を入れて1か月追加する更新を続けることが大切です。不足月が3か月前に見えれば、入金の前倒し・支払時期の調整・借入・納税猶予のどれも選べます。

「簡易版・資金繰り表の作り方」まとめ

  • 項目:前月繰越/収入(現金売上・売掛回収・借入等)/支出(仕入外注・人件費・固定費・返済・納税・臨時)/収支差額/翌月繰越/最低残高ライン
  • 発生月ではなく入出金の月で記入。減価償却は書かず、返済元本・納税・設備投資は書く
  • 売掛は回収サイトで入金月をずらす。社保は翌月末、源泉は翌月10日(特例7・1月)、納税は法人・個人の年間予定で
  • 30分手順:残高→請求済み売掛→支払予定→固定費コピー→納税・臨時→見込み売上→引き算。月初に実績を入れて更新
  • 不足月の対処:入金前倒し・支払時期調整・早めの借入や借換え・納税猶予・役員報酬は税理士に相談
  • 金融機関には実績と予測を分け、根拠・資金使途・返済原資を示し、試算表と整合させる

「資金繰り表」に関するよくある質問

A.会計ソフトのキャッシュフロー計算書やレポートは「過去の実績」を示すもので、将来の入出金の見込みは入っていません。資金繰り表の目的は「3か月先に現預金がいくらになるか」を予測することなので、見込み売上の入金や納税予定を手で入れる必要があります。クラウド会計の中には、請求書や支払予定から将来の資金繰りを予測する機能を持つものもあり、請求・支払のデータが整っていれば大部分を自動化できます。その場合も、納税・賞与・設備投資などの臨時支出は手入力が必要です。まずは簡易版を手で作り、仕組みが分かってからソフトの機能を使うのが確実です。

A.月商(月の売上高)の1か月分を最低ラインとし、1.5〜3か月分を目標にするのが一般的な目安です。月の固定費と返済・納税の合計を下回らない額、と考えても構いません。業種によって差があり、売掛金の回収が遅い業種(建設業など)や季節変動の大きい業種は多めに、現金商売で入金が早い業種は少なめで済みます。大切なのは、ラインを決めたうえで「3か月先にラインを下回る月があるか」を毎月確認し、下回る見込みが出た時点で動くことです。

A.続かない原因の多くは「完璧に作ろうとする」ことです。細かい経費は「その他固定費」でまとめ、見込み売上は直近の平均で置き、月初に残高と請求書だけ更新する、という最小限の運用なら月15分で済みます。また、税理士との月次面談の場で一緒に更新する形にすると、確実に続きます。当事務所の経営者コーチングでは、毎月のセッションで資金繰り表の更新と見直しを行っており、「一人では続かない」という方に向いています。

資金繰り表の作成・毎月の更新は、横浜の岩本隆一税理士事務所の経営者コーチングへ。

「初回の資金繰り表を一緒に作りたい」「金融機関に出す資金繰り表を整えたい」「不足する月の対処を相談したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の中小企業の経営者・個人事業主を中心に、代表税理士が直接対応します。顧問契約の有無にかかわらずご利用いただけます。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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