ひとり社長の社会保険|法人化で加入義務になる保険と保険料の目安、役員報酬との関係

ひとり社長の社会保険|法人化で加入義務になる保険と保険料の目安、役員報酬との関係

横浜市で会社設立サポートと設立後の税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「社員は自分一人だが、社会保険に入らないといけないのか」「保険料はいくらになるのか」「国民健康保険のままではだめなのか」――法人化を検討する個人事業主の方や、設立直後の代表者の方から必ず出る質問です。法人は、代表者一人でも役員報酬を支払っていれば健康保険・厚生年金保険の加入が義務で、保険料は役員報酬の額で決まります。つまり、役員報酬の決め方が、そのまま社会保険料の決め方になります。

この記事では、ひとり社長でも加入義務になる保険の種類と加入しなくてよい保険、保険料の計算方法と目安(神奈川県・2026年度の料率)、国民健康保険・国民年金から切り替えるメリットとデメリット、加入手続き(年金事務所への新規適用届)と社労士の範囲、役員報酬と社会保険料を合わせた資金計画を解説します。本記事は2026年11月6日時点の健康保険法・厚生年金保険法と、全国健康保険協会(協会けんぽ)神奈川支部・日本年金機構・横浜市が公表している2026年度(令和8年度)の料率に基づいています。料率は年度ごとに改定されます。役員報酬の額そのものの決め方は「設立初年度の役員報酬の決め方」で解説しているため、本記事は社会保険の側から整理します。

ひとり社長でも加入義務になる保険と加入しなくてよい保険

法人(株式会社・合同会社など)は、従業員の人数にかかわらず健康保険・厚生年金保険の「強制適用事業所」です。個人事業は従業員5人未満なら任意ですが、法人は代表者一人でも対象になります。

保険ひとり社長(従業員なし)内容
健康保険(協会けんぽ)加入義務(役員報酬を支払っている場合)医療費の3割負担、傷病手当金、出産手当金、高額療養費。扶養家族は追加保険料なしで加入できる。40〜64歳は介護保険料を併せて負担
厚生年金保険加入義務(同上。70歳まで)国民年金(基礎年金)に厚生年金が上乗せされる。障害厚生年金・遺族厚生年金も対象。配偶者を扶養(第3号被保険者)にすると配偶者の国民年金保険料が不要
労災保険対象外(加入できない)労働者のための保険。代表者は原則対象外。従業員を雇った時点で事業所として加入。代表者は「特別加入」制度を使える業種もある
雇用保険対象外(加入できない)代表者・取締役は原則加入できない。従業員を雇った時点で手続き

役員報酬がゼロの場合は、健康保険・厚生年金の加入要件(報酬の支払い)を満たさないため加入できず、国民健康保険・国民年金のまま続けます。「設立したが当面は報酬を出さない」という期間は国保・国民年金で、報酬の支給を始めた月から社会保険の加入になります。また、役員報酬が極端に低い場合(他に本業の給与があり、法人は副業的に運営している等)、「常態として報酬を受けて経営に従事している」と言えるかで加入の判断が分かれることがあり、年金事務所に確認します。

保険料の計算方法と目安神奈川県・2026年度の料率

社会保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算し、会社と本人が半分ずつ負担します(労使折半)。標準報酬月額は役員報酬の月額を等級表に当てはめた金額で、賞与にも同じ料率がかかります。

保険料率(2026年度・神奈川県)料率備考
健康保険9.92%協会けんぽ神奈川支部。2026年3月分(4月納付分)から。都道府県ごとに異なり、年度ごとに改定
子ども・子育て支援金0.23%全国一律。2026年4月分(5月納付分)から新たに加わった
介護保険(40〜64歳)1.62%全国一律。40歳の誕生月から
厚生年金保険18.3%全国一律・固定。標準報酬月額の上限65万円(2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引上げ)
合計約30.07%(40〜64歳)/約28.45%(40歳未満)会社と本人で折半。本人負担は約15.0%/約14.2%

仮定例(神奈川県・2026年度料率・賞与なし・概算)で役員報酬別の保険料を示します。

役員報酬(月額)標準報酬月額保険料合計(月・40〜64歳)うち会社負担/本人負担年間合計
10万円9.8万円(厚生年金は最低等級8.8万円)約2.8万円各約1.4万円約33万円
30万円30万円約9.0万円各約4.5万円約108万円
40万円41万円約12.3万円各約6.2万円約148万円(40歳未満なら約140万円)

役員報酬30万円で見ると、会社負担が月約4.5万円、本人の手取りから月約4.5万円が差し引かれ、法人全体では年間約108万円の支出になります。法人化の損益を考えるときは、この「会社負担分+本人負担分」の合計を税金と合わせて比較します(「個人事業主の法人化はいくらから?」参照)。

国民健康保険・国民年金から切り替えるメリットとデメリット

個人事業主のときは国民健康保険(横浜市)と国民年金に入っています。法人化して社会保険に切り替わると、保険料の計算方法と保障の内容が変わります。

比較項目国民健康保険+国民年金(個人事業主)健康保険+厚生年金(法人の役員)
保険料の決まり方国保:前年の所得と世帯人数で計算(横浜市2026年度:所得割 医療8.33%+支援2.62%+介護2.84%+子ども分0.34%、均等割 1人あたり年約7.2万円、上限年113万円)。国民年金:定額 月17,920円(2026年度)役員報酬(標準報酬月額)×約30%。会社と本人で折半。所得ではなく「報酬の額」で決まるため、役員報酬を決めた時点で確定する
負担者全額本人(事業の経費にならず、所得税の社会保険料控除)半分は会社(法人の経費=損金)、半分は本人(給与から天引き、社会保険料控除)
扶養家族国保に扶養の概念がなく、家族の人数分の均等割がかかる。配偶者も国民年金を各自負担配偶者・子は追加保険料なしで健康保険に加入。配偶者は第3号被保険者になり国民年金保険料が不要(年収要件あり)
病気・けがで働けないとき傷病手当金なし(横浜市の国保では原則なし)傷病手当金(給与の約3分の2を最長1年6か月)、出産手当金あり。ただし役員は休業中も役員報酬が出ていれば調整される
将来の年金老齢基礎年金のみ(2026年度の満額は月70,608円・年約84.7万円)老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬と加入期間に応じて上乗せ)。障害・遺族厚生年金も対象

仮定例で比較します。事業所得480万円・単身・40〜64歳の個人事業主が横浜市で国保+国民年金に入っている場合、2026年度の国保料は年約69万円、国民年金は約21.5万円で、合計約90万円(全額本人負担)です。同じ方が法人化して役員報酬を月40万円(年480万円)にすると、社会保険料は年約148万円(会社74万円・本人74万円)になります。保険料の総額は増えますが、会社負担分は法人の損金になり、将来の厚生年金が上乗せされ、扶養家族がいれば家族分の国保料が不要になります。保険料だけを比べるのではなく、「法人税・所得税の変化」「将来の年金」「家族の保険料」を合わせて判断します。

なお、役員報酬を低く設定した場合(月10万円前後)は、社会保険料の年額が約33万円となり、国保+国民年金より低くなることもあります。ただし、報酬が低いと厚生年金の上乗せも小さく、生活費を法人から別の形で出すと税務上の問題(役員貸付金・認定賞与)が生じるため、報酬の額は生活費と税金・社会保険料を合わせて決めます。

加入手続き年金事務所への新規適用届と社労士の範囲

手続き提出先期限添付書類
健康保険・厚生年金保険 新規適用届事業所の所在地を管轄する年金事務所(横浜市内は区ごとに管轄が分かれる)または事務センター。電子申請(e-Gov)可適用事業所になった日(設立日、または役員報酬の支給を始めた日)から5日以内法人の登記簿謄本(登記事項証明書)原本(90日以内)、法人番号指定通知書等の写し。所在地が登記と異なる場合は賃貸借契約書の写しなど
被保険者資格取得届同上資格取得日(報酬支給開始日)から5日以内代表者の基礎年金番号またはマイナンバー、報酬月額(役員報酬の額)
健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届同上資格取得と同時扶養家族の続柄・収入が分かる書類(マイナンバー記載で省略できるものあり)
国民健康保険の脱退横浜市の区役所 保険年金課社会保険の資格取得後14日以内加入した健康保険の資格取得日が分かるもの(資格確認書、資格情報のお知らせ、マイナポータルの資格情報画面等)、本人確認書類、国保の資格確認書(お持ちの方)

新規適用届の期限は5日と短く、設立から3か月以内に決める役員報酬の額が前提になるため、「設立日を決める→役員報酬の額を決める(株主総会議事録)→新規適用届・資格取得届」の順序を設立前に組んでおきます。手続きが遅れた場合、加入日は本来の日(報酬支給開始日)に遡り、遡及分の保険料をまとめて納付します(最長2年)。保険料は翌月末に口座振替または納付書で納め、本人負担分は翌月の役員報酬から天引きします。

ひとり社長の社会保険加入の順序

役員報酬の額が保険料の前提になるため、次の順序を設立前に組んでおきます。

会社の設立日を決める設立日を決めます。適用事業所になるのは、設立日または役員報酬の支給を始めた日です。
役員報酬の額を決める設立から3か月以内に、株主総会で役員報酬の額を決めて議事録に残します。この額で保険料が決まります。
新規適用届・資格取得届適用事業所になった日から5日以内に年金事務所へ出します。扶養する家族がいれば被扶養者届も添えます。
国民健康保険の脱退社会保険の資格を取得してから14日以内に、区役所の保険年金課で国民健康保険の脱退の手続きをします。
保険料を毎月納める保険料は翌月末に口座振替か納付書で納め、本人負担分は役員報酬から天引きします。
手続きが遅れても加入日は本来の日に遡り、遡及分の保険料をまとめて納めることになります。
出典:日本年金機構「新規適用の手続き」。本文の説明を図にまとめたものです。届出の代行は社会保険労務士の業務です。

手続きの代行は、社会保険労務士の業務です(届出書類の作成・提出代行は社労士法で社労士に限られています)。税理士である当事務所は、役員報酬の額の検討、保険料を織り込んだ資金計画、給与計算と源泉徴収・年末調整、法定調書を担当し、年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署への届出は提携の社労士をご紹介しています。ご自身で手続きする場合は、年金事務所の窓口と電子申請(e-Gov・GビズID)で行えます。設立後の届出全体の期限は「会社設立後の届出期限カレンダー」をご覧ください。

(仮定例)設立月から役員報酬を支給する場合の手続きの順序

(仮定例)代表者1人の会社を設立し、設立月から役員報酬を支給すると決めた場合を考えます。年金事務所への「新規適用届」の提出時期は、加入の要件を満たした事実の発生から5日以内です。代表者の被保険者資格取得届も同時に出し、扶養する配偶者がいれば被扶養者(異動)届も添えます。

新規適用届には、提出日からさかのぼって90日以内に発行された法人の登記事項証明書(コピー不可)と、法人番号指定通知書等のコピーを添付します。登記が完了するまで登記事項証明書は取得できないため、設立前に役員報酬の額を決め、社労士への依頼や届書の準備を済ませておき、登記完了後すぐに提出できるようにしておくと遅れを最小限にできます。実際の事例ではありません。

出典:日本年金機構「新規適用の手続き」

役員報酬と社会保険料を合わせた資金計画

役員報酬は原則として事業年度の途中で変更できないため(定期同額給与)、設立時に決めた報酬が1年間の社会保険料を決めます。資金計画は次の順序で立てます。

  • 法人の年間支出に「役員報酬+会社負担の社会保険料」を入れる:役員報酬月30万円なら、会社の支出は報酬360万円+社会保険料の会社負担約54万円=約414万円。この金額を払っても法人の資金が回る売上・利益か、資金繰り表で確認します(「簡易版・資金繰り表の作り方」参照)。
  • 本人の手取りを計算する:報酬30万円から本人負担の社会保険料約4.5万円と源泉所得税・住民税を引いた額が手取りです。生活費がこの手取りで足りるかを確認します。足りない場合に法人の資金を引き出すと役員貸付金になり、利息の計上や金融機関からの評価の問題が出ます。
  • 納付のタイミングを押さえる:社会保険料は翌月末納付(当月分の報酬から天引きした本人負担分と会社負担分を合わせて納付)。たとえば4月分の保険料は5月末に納めます。設立初月は資格取得の月から保険料が発生し、月末に資格取得しても1か月分かかります(月の途中の設立日でも日割りはありません)。
  • 年度途中の料率改定を織り込む:健康保険料率は毎年3月分から、介護保険料率も同時に改定されます。4月納付分から保険料が変わるため、給与計算の設定を更新します。
  • 報酬の見直しは期首に:次の事業年度の役員報酬を変えると、標準報酬月額の改定(随時改定)で、2等級以上の差が生じる場合などは変更後の報酬を受けた月から4か月目に保険料が変わります(差が小さい場合は定時決定で反映)。報酬を上げると税金と社会保険料の両方が増えるため、期首の3か月以内に、翌期の利益見込みと合わせて決めます。

法人化そのものの判断は「法人成りの手続き」、株式会社と合同会社の違いは「株式会社と合同会社の違い」で解説しています。会社設立サポートでは、設立前の面談で役員報酬と社会保険料を含めた初年度の資金計画を一緒に作り、設立後の給与計算・年末調整まで対応します。

「ひとり社長の社会保険」に関するよくある質問

A.役員報酬がゼロの間は加入要件を満たさないため加入できず、国民健康保険・国民年金のままになります。ただし、法人から生活費を引き出せば役員貸付金になり、報酬ゼロのまま続けるのは実務上難しいです。また、報酬を出し始めた月から加入義務が生じるため、「当面はゼロ、軌道に乗ったら支給」とする場合も、支給開始時に5日以内の手続きが必要になることを覚えておきます。

A.自分の会社から役員報酬を受けていれば、原則としてその会社でも加入対象になり、「二以上事業所勤務届」を出して、両方の報酬を合算した標準報酬月額で保険料を按分します。本業の会社に副業の法人の存在が通知される形になります。役員報酬を支給しなければ自分の会社での加入は生じません。副業法人の設計は、本業の就業規則の副業規定とあわせて事前に検討してください。

A.会社負担分(約半分)は「法定福利費」として法人の損金になります。本人負担分は役員報酬から天引きされ、本人の所得税・住民税の計算で社会保険料控除の対象になります。個人事業主のときの国保・国民年金は全額が本人の社会保険料控除で、事業の経費にはなりません。法人化の比較では、会社負担分が損金になることで法人税等が減る効果も含めて計算します。

A.速やかに新規適用届・資格取得届を提出します。加入日は本来の日(役員報酬の支給開始日)に遡り、遡及した期間の保険料(会社負担・本人負担の両方)をまとめて納付します。遡及できるのは最長2年です。半年分なら、役員報酬30万円で約54万円(月約9万円×6か月)が一度に必要になります。本人負担分の精算(過去の報酬から天引きしていなかった分)も必要なため、年金事務所と社労士に相談して進めます。

「ひとり社長の社会保険」まとめ

  • 法人は代表者一人でも、役員報酬を支払っていれば健康保険・厚生年金の加入が義務。労災・雇用保険は代表者は対象外(従業員を雇ったら事業所として加入)。報酬ゼロの間は加入できず国保・国民年金のまま
  • 保険料は標準報酬月額×約30%(2026年度・神奈川県:健保9.92%+支援金0.23%+介護1.62%+厚年18.3%)を会社と本人で折半。仮定例:報酬月30万円で月約9万円(会社・本人各約4.5万円)、年約108万円
  • 国保+国民年金との違いは、会社負担分が損金になる、扶養家族の追加保険料がない、傷病手当金がある、厚生年金が上乗せされる点。仮定例(所得480万円・単身)では国保+国民年金 年約90万円に対し、報酬月40万円の社保は年約148万円(会社74万円・本人74万円)
  • 手続きは年金事務所に新規適用届・資格取得届を5日以内(登記事項証明書を添付)、国保の脱退は区役所に14日以内。遅れると最長2年遡って徴収。届出の代行は社労士の業務で、税理士は役員報酬・資金計画・給与計算を担当
  • 資金計画は「役員報酬+会社負担の社会保険料」を法人の支出に入れ、本人の手取りで生活費が足りるかを確認。保険料は翌月末納付、料率は毎年3月分から改定、報酬の見直しは期首3か月以内

役員報酬と社会保険料を含めた設立後の資金計画は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「法人化すると社会保険料がいくらになるか知りたい」「役員報酬をいくらにすれば手取りと会社の資金が両立するか相談したい」「設立後の給与計算・年末調整まで任せたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内で設立するひとり社長・小規模法人を中心に、代表税理士が直接対応し、社会保険の届出は提携の社労士をご紹介します。ご依頼を検討されている方の面談・お見積りは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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