個人事業主に税務調査が来る確率と時期|10年以上来ない人の特徴、「来た」ときの最初の対応
更新日:2026年11月7日
この記事の要点
- 国税庁の公表資料から計算すると、所得税の実地調査は申告者全体の約0.2%、事業所得者に限っても年に約1.2%です。「10年以上来ていない」のは珍しいことではありません。
- 調査先は、申告書と資料情報の分析(AIも活用)で選ばれます。無申告、海外取引、インターネット取引は公表資料でも重点対象で、現金商売の業種は申告漏れが高額な業種として挙げられています。
- さかのぼって調べられるのは原則5年分(偽りその他不正の行為があれば7年分)で、廃業していても期間内なら対象になります。
- 連絡が来たら、最初の3日間で「通知内容を控える」「日程を即答しない」「資料を捨てない」「税理士に相談する」の4つを行います。
横浜市で個人事業主・フリーランスの確定申告と税務調査の対応をお引き受けしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
開業して5年、10年と経っても税務調査の連絡がないと、「自分には来ないのか」「来たら何をされるのか」が気になるものです。この記事では、国税庁の公表資料をもとに、個人事業主に調査が来る確率、来やすい人・来にくい人の特徴、時期、廃業後の扱い、「来た」ときに最初にやることを整理します。当事務所の相談実績や特定の調査事例を紹介するものではありません。
税務の説明は、2026年11月7日に確認した国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」、国税通則法、税務調査手続に関するFAQに基づきます。
個人事業主に税務調査が来る確率:実調率を計算してみる
国税庁は「申告者の何%に調査が入るか」という割合(実調率)そのものは公表していませんが、調査の件数と申告者数はそれぞれ公表されているので、割り算で目安は出せます。
令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の所得税の実地調査は46,896件、簡易な接触は689,440件でした。令和6年分の所得税等の確定申告をした人は2,339万人、そのうち主たる所得が事業所得の人は約379万人です。
| 区分 | 令和6事務年度の件数 | 申告者全体(2,339万人)に対する割合 | 事業所得者(379万人)に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 実地調査(所得税) | 46,896件 | 約0.2% | 約1.2% |
| うち特別調査・一般調査 | 36,404件 | 約0.16% | 約1.0% |
| うち着眼調査 | 10,492件 | 約0.04% | 約0.3% |
| 簡易な接触 | 689,440件 | 約2.9% | ― |
(注)実地調査には譲渡所得の申告者や無申告者など事業所得者以外も含まれるため、「事業所得者に対する割合」は上限寄りの目安です。事務年度(7月〜翌年6月)と年分(1月〜12月)の区切りも一致しません。簡易な接触には還付申告の添付書類の提出依頼なども含まれます。
同じ事務年度の法人税等の実地調査は約5万4千件、法人税の申告件数は約322万件で、法人の実調率は約1.7%です。個人事業主はこれよりやや低い水準です。
例(仮定)として、毎年1.2%の確率でランダムに選ばれるとすれば、10年間に一度でも調査を受ける確率は約12%です。選定はランダムではないので目安ですが、「10年来ていない」人が多数派であることは数字からも分かります。
実地調査と「簡易な接触」の違い
実地調査は、調査官が自宅や事務所に来て帳簿書類を確認する調査です。「特別調査・一般調査」は高額・悪質な不正が見込まれる事案に深度ある調査を行うもの、「着眼調査」は資料情報や申告内容の分析から申告漏れが見込まれる人に短期間で行うものです。
簡易な接触は、原則として臨場せず、文書や電話、来署依頼による面接で申告内容の是正を求めるものです。件数は実地調査の約15倍あり、「税務署からのお尋ね」の多くはこちらに当たります。税務署は、調査と行政指導のどちらに当たるかを手続の前に明示することになっています(税務調査手続に関するFAQ問2)。
業種による差:公表されている上位10業種
国税庁が公表する「事業所得者の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」は、令和6事務年度では、キャバクラ、眼科医、ホステス・ホスト、経営コンサルタント、太陽光発電、バー、コンテンツ配信、ブリーダー、スナック、システムエンジニアでした。「調査件数が多い業種」ではなく「1件当たりの申告漏れが大きかった業種」ですが、現金売上の多い業種とインターネット関連の業種が目立ちます。業種別の実調率は公表されていません。
税務調査が来やすい人・10年以上来ない人の特徴
公表資料で重点対象とされている人
国税庁は、収集した資料情報と申告書を分析し、AIも活用して調査の必要度が高い対象を選んでいるとしています。令和6事務年度の公表資料では、次の人に対する調査が主な取組として挙げられています。
- 無申告の人(実地調査4,812件、1件当たりの追徴税額524万円で過去最高)
- 海外投資や海外取引を行っている人(国外送金等調書やCRS情報を活用)
- インターネット取引や暗号資産の取引を行っている人
- 消費税の還付申告をした人
- 富裕層
どのような資料情報が分析に使われているかは、KSKシステムと税務調査で確認されやすい5大パターンで解説しています。
一般に「来やすい」と言われる特徴
次の特徴は、国税庁が選定基準として公表しているものではなく、一般に言われているものです。推測を含むことを前提にお読みください。
- 売上が毎年1,000万円の少し下で推移している。1,000万円は消費税の納税義務を判定する基準であり(国税庁タックスアンサーNo.6501)、調査の基準ではありませんが、意図的に抑えているように見える申告は確認されやすいと言われます。
- 現金売上が多く、売上が通帳に残らない。
- 経費率が高い、同業と比べて利益率が低い、または経費だけが急に増えた年がある。
- 売上や所得が前年から大きく変動している。
- 取引先が調査を受けた。正確な事実の把握に必要な場合、税務署は取引相手にいわゆる反面調査を行うことがあります(同FAQ問23)。
- 支払調書など法定調書と申告内容が合わない。原稿料・講演料・税理士報酬などは、同一人への年間支払が5万円を超えると支払者が税務署に支払調書を提出します(同No.7431)。
10年以上来ない人に多い特徴
逆に、長く調査が来ていない人には次の傾向があると考えられます。これも推測を含みます。
- 売上がほぼ振込で、通帳と請求書で全額を追える。
- 支払調書やインボイスなど外部の資料と申告内容が一致している。
- 申告内容が毎年安定していて、経費率が極端ではなく、期限内申告を続けている。
- 税理士が関与し、申告書に税理士法33条の2の書面(書面添付)を付けている。この場合、税務署は事前通知の前に税理士へ意見を述べる機会を与えることになっています(税理士法35条)。
注意したいのは、「来ていない=申告が正しいと認められた」ではないことです。次に説明する期間制限によって、古い年分が調査できなくなっていくだけです。
税務調査が来やすい時期:7〜12月に多いと言われる理由
税務署の事務年度は7月1日から翌年6月30日までで、国税庁の調査の統計もこの区切りで集計されています。一般に、7月以降に新しい年度の調査先の選定と着手が進み、確定申告期(2〜3月)は税務署が申告の受付や相談に人手を割くため、個人の実地調査は秋から年末にかけて多いと言われています。
ただし、国税庁は月別の調査件数を公表しておらず、1月〜6月に調査が始まることもあります。時期や「売上いくらから」といった基準の有無は、税務調査はいつ来る?個人・法人の時期と調査対象の選ばれ方で詳しく整理しています。
廃業後も税務調査は来る?何年前までさかのぼるか
税務署が更正や決定をできる期間は、法定申告期限から原則5年、偽りその他不正の行為によって税額を免れていた場合は7年です(国税通則法70条)。
例(仮定)として、令和5年分の所得税の法定申告期限は令和6年3月15日ですから、原則としてその5年後の令和11年3月15日まで、不正があった場合は令和13年3月15日まで更正・決定ができます。10年前の年分は、通常はもう対象になりません。
廃業届を出しても、事業を行っていた年分がこの期間内であれば調査の対象になります。帳簿書類の保存義務も廃業で終わるわけではなく、青色申告なら帳簿や書類は原則7年、請求書・見積書・納品書などは5年(国税庁タックスアンサーNo.2070)、白色申告でも法定帳簿は7年、その他の帳簿・書類は5年(同No.2080)の保存が必要です。
申告をしていない年分がある人は、「決定」も同じ期間制限の中で行われます。無申告の場合の調査の時期は、無申告で税務調査はいつ来る?調査官の着眼点7選で解説しています。
「税務調査が来た」ときの最初の3日間でやること
実地調査は、原則として事前に電話で通知されます(国税通則法74条の9、同FAQ問12)。電話を受けてから最初の3日間で、次の4つを行ってください。
1. 通知の内容を控える
事前通知で伝えられるのは、調査開始の日時、場所、目的、対象となる税目、対象期間、対象となる帳簿書類などです(国税通則法74条の9)。電話の最中にメモを取り、担当者の氏名・所属・連絡先も控えます。あわせて「調査ですか、行政指導ですか」と確認してください。税務署はどちらに当たるかを明示することになっています(同FAQ問2)。
2. 日程は即答しない
事前通知の際には納税者や税理士の都合を尋ねることになっており、通知後でも合理的な理由があれば日時の変更を協議するとされています。申出は口頭で差し支えありません(同FAQ問16・17)。「予定を確認して折り返します」と伝え、税理士に相談してから回答すれば十分です。
3. 資料を捨てない・書き換えない
領収書の処分や帳簿の書き直しは避けてください。国税庁が公表した調査事例では、売上に係る書類をすべて破棄していたことが隠蔽行為に当たるとされ、重加算税(本税の35%、無申告の場合は40%。国税通則法68条)が課されています。この段階では、対象期間の申告書の控え、帳簿、請求書、領収書、通帳を「そろえる」ことだけを行います。
4. 税理士に相談する
税理士が税務代理権限証書を提出すると、調査の連絡や結果説明を税理士が受けることができます(同FAQ問14)。また、調査で指摘される前に自分で誤りに気づいて修正申告をすれば、指摘後の修正より過少申告加算税の割合が軽くなることがあります(国税通則法65条)。連絡から当日までの流れは税務調査の全体像と対策ロードマップ、準備の項目は税務調査の事前準備チェックリストにまとめています。
税務調査では何を見られるか
個人事業主の調査で確認されやすいのは、次の6つです。
- 通帳:事業用だけでなく個人用の口座も、入金が売上として計上されているかを照合されます。説明できない入金がないかを先に確認します。
- 売上の計上時期:年末に納品した仕事を翌年の売上にしていないか。入金日ではなく、納品日や役務の完了日の年分に計上するのが原則です。
- 経費:私的な支出が混ざっていないか、家族への支払いに実態があるか、領収書と帳簿が一致しているか。
- 現金:現金売上がある場合の、売上の記録方法と現金の管理状況。
- 在庫:商品や材料を扱う事業では、年末の棚卸の有無と金額。
- 家事按分:自宅兼事務所の家賃や通信費などを、面積や使用時間など合理的な基準で分けているか。
フリーランスの方に向けた確認ポイントと準備資料は、フリーランスの税務調査|流れと確認されやすい5つのポイントで解説しています。
よくある質問
Q1. 開業して10年、一度も税務調査がありません。もう来ないと考えてよいですか。
A. 事業所得者に対する実地調査の割合は年に約1.2%ですから、10年来ていないことは珍しくありません。ただし、調査先は毎年の申告内容と資料情報をもとに選ばれるため「来ない」とは言えません。来ていない間に申告が正しいと認められたわけでもないので、通帳と売上の照合、家事按分の根拠など、聞かれたときに説明できる状態を保つことが備えになります。
Q2. 事前通知なしに、突然調査官が来ることはありますか。
A. 実地調査は原則として事前通知がありますが、申告内容や事業内容などから、事前に通知すると正確な把握が難しくなるおそれがあると判断された場合は、通知なしで調査が行われることがあります(国税通則法74条の10、同FAQ問20)。その場合も、対象の税目や期間、目的は臨場後速やかに説明されます。調査官には税理士に連絡する旨を伝え、立会いを相談してください。
Q3. すでに廃業しています。それでも調査に応じる必要がありますか。
A. 廃業後でも、法定申告期限から5年(不正があれば7年)以内の年分は調査の対象です。帳簿書類の保存義務も残っています。事業を行っていた年分の申告書の控えと帳簿、通帳を確認し、手元にない資料があれば、その事情を税理士に伝えて対応を相談してください。
税務調査の連絡を受けたら、横浜の岩本隆一税理士事務所へ
税務署からの電話は、受けた直後が最も不安になります。岩本隆一税理士事務所では、代表税理士の岩本が最初のご相談から調査当日の立会い、調査後の修正申告まで直接担当します。顧問契約がなくても、調査の対応だけのスポットでのご依頼が可能です。初回相談とお見積りは無料で、事務所は横浜駅から徒歩11分です。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも対応しますので、事前通知の内容と申告書の控えを手元に、まずはご連絡ください。
この記事は一般的な情報であり、個別の事案の判断を確定するものではありません。
参考(一次資料)
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月) https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf
- 国税庁「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」 https://www.nta.go.jp/topics/pdf/0025005-063.pdf
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/pdf/01.pdf
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_shinkoku/pdf/hojin_shinkoku.pdf
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」(令和8年7月改訂) https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan.htm
- 国税通則法 第65条・第68条・第70条・第74条の9・第74条の10(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 税理士法 第33条の2・第35条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
- 国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm
- 国税庁タックスアンサー No.6501 納税義務の免除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
- 国税庁タックスアンサー No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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