税務調査の事前通知で伝えられる項目とは?通知内容の確認ポイントと日程調整の進め方

横浜市で税務調査の立会い・対応サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「税務署から電話があって、調査に伺いたいと言われた。何を聞かれて、何をメモすればいいのか」「仕事の都合が悪い日なのだが、日程は変えられるのか」「税理士に頼むなら、連絡は税理士に行くようにできるのか」――税務調査の事前通知の電話を受けた直後の方から、こうしたご相談を受けます。事前通知で伝えられる内容は国税通則法で決まっており、電話で何を確認し、どう動けばよいかもあらかじめ分かっています。落ち着いて項目を確認し、日程を協議し、準備に入ることが、調査当日を楽にする最初の一歩です。
この記事では、事前通知で伝えられる法定の項目(開始日時・場所・目的・税目・期間・対象の帳簿書類など)とメモの取り方、通知を税理士に受けてもらう方法(税務代理権限証書の記載)、日程変更を申し出るときの合理的な理由と伝え方、通知のない調査(無予告調査)が行われる場合、通知から調査日までの準備の進め方を解説します。本記事は2026年11月6日時点の国税通則法74条の9・74条の10と、国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」に基づいています。調査の全体の流れは「税務調査の流れ」、税理士に依頼するタイミングは「税務調査の連絡が来たら税理士にいつ依頼する?」をご覧ください。
事前通知で伝えられる法定の項目とメモの取り方
税務署が実地の調査(調査官が事務所や自宅に来て行う調査)をするときは、原則として事前に納税者(税務代理人がいる場合はその税理士にも)に通知することが法律で定められています(国税通則法74条の9)。通知は通常、電話で行われ、次の項目が伝えられます。
| 通知される項目 | 内容 | メモしておくこと・確認すること |
|---|---|---|
| ①実地の調査を行うこと | 「調査」として行う旨。行政指導(お尋ね)とは区別される | 「税務調査ですか、行政指導ですか」と確認。調査なら加算税の扱いが変わる(「行政指導と税務調査の違い」参照) |
| ②調査を開始する日時 | 初日の日付と開始時刻(通常は午前10時ごろ) | 候補日として提示されるので、即答せず「確認して折り返す」で構わない |
| ③調査を行う場所 | 事務所・店舗・自宅など | 帳簿を保管している場所と異なる場合は申し出る。税理士事務所での実施を希望する場合も協議できる |
| ④調査の目的 | 「申告内容の確認のため」など | そのまま記録 |
| ⑤調査の対象となる税目 | 法人税・消費税・源泉所得税、所得税・消費税など | 税目ごとに資料の範囲が変わる。源泉所得税・印紙税が含まれるかを確認 |
| ⑥調査の対象となる期間 | 「令和○年○月期から令和○年○月期まで」のように通常3期分 | 対象期間の申告書控えと帳簿を用意する範囲になる |
| ⑦調査の対象となる帳簿書類その他の物件 | 総勘定元帳、仕訳帳、請求書・領収書、通帳、契約書など | 具体的に挙げられたものを書き取る。「その他必要な書類」と言われたら、例を聞く |
| ⑧その他 | 納税者の氏名・住所、調査担当者の氏名・所属部門、②③は合理的な理由があれば変更を申し出られること、⑦以外の帳簿書類等も調査中に必要と判断されれば対象になり得ること | 担当者の氏名・部門・連絡先を必ず控える。折り返しの電話番号も確認する |
メモは、電話の最中に上の表の順に書き取れるよう、手元に表を印刷しておくか、通話中に項目を言ってもらいながら記録します。聞き取れなかった項目は「もう一度お願いします」と確認して構いません。通知は口頭で行われ、書面での通知は原則ありませんが、通知内容を復唱して確認することで、後の認識のずれを防げます。通知を受けた日付・時刻も記録しておきます。
なお、事前通知の電話は「お尋ね」や「来署依頼」の文書とは別のものです。文書で「資料を持って税務署に来てほしい」と言われるケースや、「申告内容について確認したい点がある」というお尋ねは行政指導として扱われることがあり、その段階で自主的に修正申告をすれば加算税が軽減されます。電話の相手が「調査」と言っているかどうかを最初に確認する理由はここにあります。
通知を税理士に受けてもらう方法税務代理権限証書の記載
税理士に税務代理を委任している場合、事前通知は納税者本人と税理士の双方に行われるのが原則です。ただし、申告書に添付する「税務代理権限証書」に、調査の通知について税理士に行うことへの同意を記載しておくと、税理士への通知だけで足りることになります(国税通則法74条の9第5項)。この記載があれば、税務署からの最初の電話は税理士に入り、納税者は税理士から連絡を受けて日程を決める流れになります。
- すでに顧問税理士がいる方:直近の申告書に添付した税務代理権限証書の記載を確認してください。同意の記載があれば、税務署からの電話が本人に来た場合でも「税理士に連絡してほしい」と伝えて差し支えありません。
- 複数の税理士に依頼している方:代表する税理士を定めて税務代理権限証書に記載しておくと、その税理士への通知で足ります。
- 通知を受けてから税理士に依頼する方:事前通知の後でも、税理士に税務代理権限証書を税務署に提出してもらえば、その後の日程調整や調査当日の連絡は税理士が窓口になれます。通知を受けた時点のメモ(上の表)を税理士に渡してください。
- 記載がない場合:納税者本人に通知が来ます。その場で日程を確定せず、「税理士と相談して折り返す」と伝えれば十分です。税務署側もそれを前提に候補日を示しています。
税理士が調査で代理人として行えること、本人が答える必要がある場面は「税務調査で税理士が代理人として行うこと」で解説します。
日程変更を申し出るときの合理的な理由と伝え方
通知された調査の開始日時・場所は、納税者に合理的な理由があれば、変更を申し出て協議できることになっています(国税通則法74条の9第2項)。「協議」であって、納税者の希望どおりに必ず変更される権利ではありませんが、実務上は合理的な理由を具体的に伝えれば、調整に応じてもらえるのが通常です。
- 合理的な理由とされる例:国税庁のFAQは、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合などを挙げています。繁忙期(決算・納品・イベント)で事業に支障が出る、担当者(経理責任者)が出張・休暇で不在、税理士の予定が合わない、帳簿の保管場所が別で運搬に時間がかかる、といった事情も具体的に説明すれば協議の対象になります。
- 伝え方:「その日は○○のため対応が難しく、○月○日または○月○日であれば対応できます」と、理由と代替の候補日を同時に伝えます。理由だけ述べて候補日を示さないと、調整が長引きます。税理士が窓口の場合は税理士から連絡します。
- 避けたいこと:理由なく先延ばしを繰り返すこと、連絡を返さないこと。調査を拒否しているとみなされると、以後の対応が厳しくなります。また、延期の間に帳簿を作り直したり書類を処分したりすることは、重加算税や青色申告の承認取消しの原因になります。
- 場所の変更:帳簿を税理士事務所で保管している場合や、店舗で営業中に調査を受けると支障がある場合は、税理士事務所や別の会議室での実施を申し出ることができます。ただし、事業の実態を確認するために事業所での実施を求められることもあります。
日程調整の目安として、事前通知から調査日までは「納税者が準備できる相当の時間的余裕」を置くこととされており、実務では通知から2〜3週間程度先の日程が多くなります。準備に必要な期間を考えて候補日を出してください。
(仮定例)決算月に事前通知の電話を受けた場合
(仮定例)3月決算の法人の社長が、3月上旬に税務署から実地の調査の事前通知の電話を受け、3月下旬の日程を提示されたとします。社長は、調査の開始日時・場所・目的・税目・期間・対象の帳簿書類と担当者の氏名・部署を表の順にメモし、日程は「税理士と相談して折り返す」と伝えて電話を終えます。
その後、税理士から担当者に連絡し、決算月で棚卸と決算作業が重なることを理由に、4月中旬の候補日を2つ示して協議します。日程の変更は希望どおりになる権利ではないため、理由と代わりの候補日を具体的に伝えることが大切です。実際の事例ではありません。
通知のない調査(無予告調査)が行われる場合
事前通知は原則ですが、税務署が「事前に通知すると違法・不当な行為を容易にし、正確な課税標準の把握を困難にするおそれがある」などと判断した場合は、通知なしで調査が行われることがあります(国税通則法74条の10)。現金商売(飲食・小売・美容など)で売上の記録が現金に依存している業種、過去に不正があった場合、取引先の調査から資料の隠匿が疑われる場合などに行われることがあります。
- 無予告で調査官が来たときの対応:身分証明書(質問検査章)の提示を求め、氏名・所属を控えます。調査の目的・税目・期間はその場で説明されます。顧問税理士がいる場合は「税理士に連絡するので到着まで待ってほしい」と申し出ることができ、通常は応じてもらえます。
- その場でできること・できないこと:任意調査なので、調査官が無断で引き出しや金庫を開けることはありません。ただし、正当な理由なく帳簿の提示を拒否したり、質問に答えなかったりすると罰則の対象になり得ます。現金の実査(レジ・金庫の現金を数える)は無予告調査の典型的な手順で、拒否せずに立ち会います。
- その後の流れ:初日に現金の実査と当日の資料の確認が行われた後、帳簿の精査は日程を決めて続けられることが多く、以後は通常の調査と同じ流れになります。
無予告調査の可能性がある業種の方は、日々の現金管理(レジの締め・現金出納帳と実際の現金の一致)を整えておくことが最も有効な備えです。任意調査と強制調査(査察)の違いは「任意調査と強制調査の違い」をご覧ください。
通知から調査日までの準備の進め方
事前通知を受けてから調査日までの2〜3週間で、次の順に準備します。
事前通知から調査日までは2〜3週間程度が多く、次の順で準備します。
- ①税理士への連絡(当日〜翌日):通知のメモを渡し、立会いの依頼と日程の協議を決めます。税理士がいない場合は、この段階で依頼するかを決めます。費用や依頼の判断は「税務調査の連絡が来たら税理士にいつ依頼する?」で解説しています。
- ②資料の所在確認(1週目):通知された対象期間・税目の申告書控え、総勘定元帳、通帳、請求書・領収書、契約書、給与台帳、固定資産台帳をそろえ、不足しているものを特定します。クラウド会計のデータは期間ごとに出力できる状態にします。
- ③論点の確認(1〜2週目):売上の計上時期、個人的な支出の混在、家族への給与、役員貸付金、在庫、消費税の課税区分など、調査で確認されやすい項目を税理士と洗い出し、説明の根拠(契約書・議事録・按分の計算)を用意します。誤りが見つかった場合、調査開始前に自主的に修正申告をすれば加算税が軽減されるため、この段階の確認は重要です。
- ④当日の段取り(調査日前):調査の場所(会議室・応接)、対応する人(社長・経理担当・税理士)、資料の並べ方、調査官への説明の分担を決めます。従業員への伝え方(調査が入ること、質問されたら事実を答えること)も確認します。
- ⑤やってはいけないこと:帳簿の書き換え、書類の廃棄、取引先への口裏合わせ。これらは重加算税(35〜40%)の対象になるだけでなく、調査の範囲を広げる原因になります。
準備のチェックリストは「税務調査の事前準備チェックリスト」にまとめています。当事務所の税務調査サポートでは、事前通知の直後からのご依頼で、日程の協議・資料の確認・論点の整理・当日の立会いまで一括で対応しています。顧問税理士がいない方のスポットのご依頼も可能です。
「税務調査の事前通知」に関するよくある質問
調査の「目的」(申告内容の確認など)は通知されますが、調査対象に選ばれた具体的な理由(選定の経緯)は説明されないのが通常です。国税庁のFAQでも、実地の調査が必要と判断した理由は事前通知の項目に含まれていないとされています。調査に要する日数や調査官の人数は、尋ねれば目安を教えてもらえることが多いです。
合理的な理由(業務上やむを得ない事情)を具体的に伝え、代替の候補日を示せば協議してもらえます。1か月程度先への変更は、理由が明確であれば認められることが多いですが、変更は協議事項であり、納税者の希望どおりになる権利ではありません。長期間の延期を繰り返すと調査に非協力的と受け取られるため、現実的に対応できる最も近い日程を提示するのが得策です。
調査の過程で必要と判断された場合、通知された期間以外の年分や、通知された帳簿書類以外の物件についても質問検査が行われることがあります(通知の際にもその旨が伝えられます)。対象期間が広がる場合は、その年分についての調査として改めて説明があります。通知された3年分の資料を中心に準備し、それ以前の資料も保管場所を把握しておけば十分です。
間に合います。通知から調査日まで通常2〜3週間あり、税理士が税務代理権限証書を提出すれば日程の協議から代理で対応できます。依頼が早いほど、資料の確認と論点の整理に時間を使えます。通知を受けた日のうちに連絡いただければ、日程の折り返しの前に方針を決められます。
「税務調査の事前通知」まとめ
- 事前通知で伝えられるのは、調査を行う旨、開始日時、場所、目的、税目、対象期間、対象の帳簿書類、担当者の氏名・所属、日時・場所の変更が申し出られること、通知外の物件も対象になり得ること。表の順にメモし、「調査か行政指導か」を最初に確認する
- 税務代理権限証書に調査の通知に関する同意を記載しておけば、通知は税理士だけで足りる。記載がなくても「税理士と相談して折り返す」で構わない
- 日程・場所の変更は合理的な理由(入院・葬儀・業務上やむを得ない事情など)があれば協議できるが、権利ではない。理由と代替候補日を同時に伝える
- 現金商売や不正の疑いがある場合は無予告調査もある。身分証の確認、税理士への連絡、現金実査への立会いで対応し、日々の現金管理を整えておく
- 通知から調査日までは、税理士への連絡→資料の所在確認→論点の洗い出し(誤りがあれば調査前に修正申告)→当日の段取り。帳簿の書き換えや書類の廃棄は絶対にしない
税務調査の事前通知を受けたら、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「通知の電話を受けたが、何から手を付けるべきか分からない」「日程の調整と当日の立会いを任せたい」「調査前に自分の申告の不安な点を確認したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・法人を中心に、代表税理士が直接対応します。顧問契約は不要で、調査のみのスポット対応も可能です。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
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