経営計画書・事業計画は必要?金融機関が見るポイントと、数字で作る簡易版

経営計画書・事業計画は必要?金融機関が見るポイントと、数字で作る簡易版

横浜市で経営者コーチングと税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。当事務所は経営革新等支援機関(認定支援機関)の認定を受けています。

「融資の申込みで事業計画書を出すよう言われたが、本当に必要なのか」「何を書けば金融機関に伝わるのか」「売上の根拠が作れない」――融資・補助金の申請や事業の見直しの場面で、計画書について経営者の方からご相談を受けます。立派な計画書を作る必要はありません。金融機関や補助金の審査が見ているのは、文章の量ではなく「数字に根拠があり、返済と実行が現実的か」という点です。数字の計画を1枚で作れれば、融資にも補助金にも、そして自分の経営判断にも使えます。

この記事では、計画書が役立つ場面(融資・補助金・社内の方向づけ・承継)、金融機関が見るポイント(返済可能性・売上の根拠・資金使途・経営者の姿勢)、数字で作る簡易版の構成(売上計画・費用・利益・返済・資金繰り)、作った後の使い方(月次で実績と比較)と形だけの計画書にならない工夫、認定支援機関として当事務所が関わる範囲を解説します。補助金・支援制度の名称や公募時期は変わるため、本文の記載は2026年11月6日時点のもので、具体的な制度は最新の公募要領で確認してください。資金繰り表の作り方は「簡易版・資金繰り表の作り方」、創業融資の具体的な内容は「創業融資の基本」で解説します。

計画書が役立つ場面融資・補助金・社内の方向づけ・承継

場面求められる計画書見られる点
融資(創業・設備・運転資金)日本政策金融公庫の創業計画書・企業概要書、金融機関所定の事業計画書・資金繰り表。既存事業は直近の試算表と合わせて返済できるか(利益と資金繰り)、資金使途が妥当か、売上の見込みに根拠があるか
補助金公募要領に沿った事業計画書(小規模事業者向け・設備投資向け・IT導入向けなどの各補助金)。認定支援機関の確認書や支援を要件・加点とするものがある補助事業の目的と効果(売上・付加価値の増加)、実施体制、収益性、政策目的との一致
公的な計画の認定経営力向上計画、先端設備等導入計画、経営革新計画など。税制優遇(設備の即時償却・税額控除、固定資産税の軽減)や補助金の加点につながる労働生産性などの指標の改善目標、設備投資の内容。認定支援機関の事前確認が必要なものがある
社内の方向づけ年間目標と月次の数字(売上・利益・現金)、行動計画経営者自身と従業員が「今年何を目指し、何をするか」を共有できるか(「年間目標を四半期・月の行動に落とす方法」参照)
事業承継・M&A中期の事業計画、承継後の体制と数字後継者・買い手・金融機関が事業の継続性を判断できるか
経営改善(返済が苦しいとき)経営改善計画(金融機関との返済条件の見直しに使う)。認定支援機関の支援で策定費用の補助を受けられる制度がある改善の実行可能性、返済計画の現実性、金融機関全体の合意

共通しているのは、どの場面でも「売上・費用・利益・返済・資金」の数字の計画が中心で、文章はその補足だということです。一つの数字の計画を作れば、融資用・補助金用・社内用に体裁を変えて使えます。

金融機関が見るポイント返済可能性・売上の根拠・資金使途・経営者の姿勢

融資の審査で金融機関(公庫・銀行・信用金庫)が計画書から読み取ろうとしているのは、次の4点です。

ポイント金融機関の見方計画書で示すこと
返済可能性毎年の返済額(元本)を、利益と減価償却費の合計(簡易なキャッシュフロー)で賄えるか。借入総額を年間の返済原資で割った「債務償還年数」がおおむね10年以内かが一つの目安利益計画と返済計画を並べ、「税引後利益+減価償却費>年間元本返済額」になっていることを示す。役員報酬・生活費を引いた後の数字で
売上の根拠「前年比120%」のような希望ではなく、客数×単価、契約済み・見込みの案件、過去の実績からの積み上げがあるか売上を構成要素に分解し、根拠(契約書・見積書・予約状況・過去の月別実績・商圏の人口など)を添える。既存事業は直近の試算表との整合
資金使途借りたお金を何に使い、それがどう売上・利益につながるか。設備資金は見積書と一致しているか、運転資金は月商の何か月分で妥当か設備は見積書・カタログ、運転資金は資金繰り表で「いつ・何に・いくら」が分かる形に。借入金額の積算根拠を示す
経営者の姿勢・能力経営者が自分の事業の数字を説明できるか、経歴・経験が事業と結びついているか、自己資金を準備してきたか、納税・返済の履歴に問題がないか面談で計画書の数字を自分の言葉で説明できることが最重要。税理士が作った計画書を経営者が説明できないと評価は下がる。納税証明書・申告書は期限内に申告していることが前提(「融資に必要な確定申告書と納税証明書」参照)

金融機関は「計画どおりに進むか」よりも、「計画が外れたときに経営者が気づいて手を打てるか」を見ています。保守的な数字で作られ、前提が明示され、月次で見直す仕組みがある計画書は、楽観的な数字で作られた立派な計画書より信頼されます。

数字で作る簡易版の構成売上計画・費用・利益・返済・資金繰り

A4で2〜3枚、表計算ソフトで作れる簡易版の構成です。融資・補助金の所定様式がある場合も、この数字を作ってから様式に転記すれば、一貫した計画書になります。

項目内容作り方のポイント
①事業の概要(半ページ)何を、誰に、どう売るか。強み(経歴・技術・立地・取引先)。今回の計画の目的(創業・設備投資・新事業・改善)箇条書きで十分。数字の前提になる事実(経験年数・既存顧客数・契約状況)を具体的に
②売上計画(月別・3年分)売上=客数×客単価(または商談数×成約率×受注額)で、月ごとに積み上げる。1年目は月別、2〜3年目は四半期または年で季節性を前年実績から反映。新規事業は立ち上がりに時間がかかる前提で、初月から満額にしない。根拠を欄外に書く
③費用計画変動費(原価率×売上)と固定費(家賃・人件費・リース・保険・減価償却・支払利息・その他)を分けて月別に固定費は見積書・契約書・現在の試算表から積み上げる。人件費は社会保険料の会社負担(約15%)を含める。税理士費用・納税も入れる
④利益計画売上−変動費−固定費=営業利益。利息を引いて経常利益、税金(法人税等約2〜3割、個人は所得税・住民税・事業税)を引いて税引後利益役員報酬(または事業主の生活費)を固定費に入れたうえで、利益が出る計画にする。利益がゼロの計画は返済原資がない計画
⑤借入・返済計画借入額・金利・返済期間・据置期間、年間の元本返済額と利息。返済原資(税引後利益+減価償却費)との比較返済原資が年間返済額を上回ることを確認。複数の借入があれば一覧にする
⑥資金繰り計画(1年目は月別)月初残高+収入(売上入金・借入・自己資金)−支出(仕入・経費・返済・納税・設備)=月末残高売上の計上月と入金月のずれ(売掛の回収サイト)、納税月・賞与月の支出を反映。月末残高が最も少ない月を確認し、マイナスなら借入額や時期を見直す
⑦行動計画(半ページ)売上計画を達成するための具体的な行動(営業・採用・設備導入・販促)と時期、確認する指標(KPI)「誰が・いつまでに・何を」で。月次で確認できる形に

仮定例(創業1年目・サービス業):月商目標150万円(客単価3万円×50件、立ち上がりは3か月かけて到達)、変動費率20%、固定費90万円(役員報酬35万円・家賃15万円・人件費20万円・その他20万円)、借入500万円(7年返済・年間元本約71万円)、自己資金200万円。満額到達後の月次利益は150−30−90=30万円で、満額の月が12か月続いた場合の年間利益は360万円(税金を約3割と仮定すると税引後約250万円)。減価償却費を加えた返済原資は年間元本71万円を上回り、債務償還年数(借入500万円÷返済原資)は約2年。立ち上がり期間を含む1年目の利益はこれより少なくなるため、月別の売上計画から積み上げて確認します。資金繰りでは、立ち上がり3か月の累積赤字と設備・保証金の支出で月末残高が最も少なくなる月(創業3〜4か月目)の残高が確保されているかを確認します。

作った後の使い方月次で実績と比較する・形だけにならない工夫

計画書は提出して終わりにすると、翌年には引き出しの中で忘れられます。作った数字を毎月の経営に使うための方法です。

計画書を毎月の経営に使う流れ

作った計画書の数字は、毎月の実績と並べて使います。

1
計画と実績を並べる試算表の横に計画の数字を置き、売上・粗利・固定費・利益・月末現預金の差を毎月確認します。
2
差の原因を分解する差の原因を「客数か・単価か・原価か・固定費か」に分けて、次の月の行動を決めます。
3
金融機関に説明する試算表を出すときに計画と実績の比較を添え、下回った理由と対応を説明します。
4
四半期ごとに見直す3か月に1回、残りの期間の計画を実績で修正します。提出した計画の数字は記録として残します。
計画どおりでないこと自体より、説明できないことが問題になります。
本文の説明を図にまとめたものです。
  • 月次で計画と実績を並べる(予実管理):会計ソフトの試算表の横に計画の数字を置き、売上・粗利・固定費・利益・月末現預金の差を毎月確認します。多くの会計ソフトに予算を登録して比較する機能があります。差の原因を「客数か・単価か・原価か・固定費か」に分解して、次月の行動を決めます(「試算表の見方」参照)。
  • 金融機関への報告に使う:融資後、金融機関には決算書や試算表の提出を求められます。計画と実績の比較を添えて「計画より下回った理由と対応」を説明できる経営者は、次の融資の審査で評価されます。計画どおりでないこと自体より、説明できないことが問題になります。
  • 四半期ごとに見直す:3か月に1回、残りの期間の計画を実績ベースで修正します。年初の計画を12か月固定する必要はなく、「生きた計画」として更新します。ただし、融資・補助金に提出した計画の数字は記録として残し、修正版と区別します。

形だけの計画書にならないための工夫です。

  • 自分で説明できる数字だけを書く:税理士やコンサルタントが作った数字を、経営者が面談で説明できなければ意味がありません。数字の根拠を1行ずつ自分の言葉で言えるかを確認します。
  • 保守・標準・楽観の3パターン:売上の前提を3段階で置き、保守的なパターンでも返済と最低限の生活費が賄えるかを確認します。金融機関に提出するのは標準か保守のパターンにし、楽観は社内目標として使います。
  • 1枚目に要約を置く:事業の概要・借入額と使途・3年の売上と利益・返済原資・月末残高の最低額を1枚にまとめ、詳細は後ろに付けます。読む側は1枚目で判断の大半をします。
  • 前提を明記する:客単価・客数・原価率・人員・金利など、数字の前提を欄外に書きます。前提が書いてあれば、外れたときにどの前提がずれたかが分かり、修正が速くなります。
  • 行動計画と結びつける:売上計画の裏に「その売上を作る行動(商談数・発信・採用)」が書かれていれば、計画は数字遊びではなく行動の設計書になります。

(仮定例)新店の売上が計画を2割下回った場合の使い方

(仮定例)設備資金を借りて2店舗目を出した飲食店が、新店の月商を300万円(客単価3,000円×1,000人)と計画していたところ、開店から3か月の実績が月平均240万円にとどまったとします。予実管理表で分解すると、客単価は計画どおりで、客数が800人と2割少ないことが差の原因でした。

経営者は、金融機関に試算表を提出する際に「差の原因は平日昼の客数」「対応として平日昼のセットメニューを始め、近隣の事業所に案内する」「3か月後に客数を再確認する」という説明を添えました。あわせて保守パターンの資金繰り計画に組み替え、売上240万円が続いても返済と最低限の月末残高が保てるかを確認しました。実際の事例ではありません。

認定支援機関として当事務所が関わる範囲

当事務所は、中小企業等経営強化法に基づく経営革新等支援機関(認定支援機関)の認定を受けています。認定支援機関が関わることで使える制度や、計画書の作成支援の範囲は次のとおりです(2026年11月6日時点。制度の内容・名称・公募時期は変更されるため、最新の情報で確認します)。

関わり方内容
計画書の作成支援(融資)創業計画書・事業計画書・資金繰り表の数字の組み立て、売上根拠の整理、返済原資の確認、金融機関との面談の準備。数字は経営者ご自身が説明できる形で作ります。公庫・信用保証協会の制度融資には、認定支援機関の支援を受けた計画で金利等の優遇が受けられる場合があります
補助金の事業計画書公募要領に沿った事業計画書の数字部分(売上・付加価値・収益性)の作成支援。認定支援機関の確認書が要件・加点になる補助金への対応。採択後の実績報告・経理処理の整理
公的な計画の認定申請経営力向上計画(設備投資の税制優遇・金融支援)、先端設備等導入計画(固定資産税の軽減。認定支援機関の事前確認が必要)、経営革新計画などの申請支援
経営改善計画返済条件の見直しが必要な事業者の経営改善計画・早期経営改善計画の策定支援。認定支援機関が支援する場合、策定費用の一部に国の補助があります
作った後の伴走月次の試算表と計画の比較、四半期の見直し、金融機関への報告資料の作成を、税務顧問・経営者コーチングの中で継続

計画書の作成を「代行」する形ではなく、経営者ご自身が数字を組み立てる過程に税理士が同席し、根拠の確認と税務・資金繰りとの整合を担う形を基本にしています。融資の面談で数字を説明するのは経営者ご本人であり、その説明力が審査の評価を左右するためです。会社設立サポートでは創業融資の計画書を、税務顧問サポートでは既存事業の設備投資・新事業の計画書を、それぞれの流れの中で支援しています。

「経営計画書・事業計画書」に関するよくある質問

A.実績がなくても、売上を「客数×客単価」などに分解し、各要素の根拠を事実で示すことはできます。客単価は提供するサービスの価格表、客数は商圏の人口・競合の状況・前職での顧客数・すでに見込みのある契約や予約、稼働率は営業日数と1日の対応可能件数の上限から積み上げます。満額に達するまでの立ち上がり期間を置き、保守的なパターンでも返済できることを示せば、金融機関は根拠として受け止めます。「同業の平均」だけを根拠にした数字は弱いので、自分の事業の事実と結びつけてください。

A.税理士が数字の整合(売上・費用・利益・返済・資金繰りの一貫性、税金の見込み)を確認した計画書は、矛盾が少なく審査の説明がしやすくなります。認定支援機関の支援を要件・優遇とする制度もあります。ただし、融資の判断は計画書だけでなく、経営者が面談で数字を説明できるか、自己資金・経歴・信用情報・納税状況に問題がないかを総合して行われます。税理士が作った数字を経営者が説明できない計画書は、逆に評価を下げることがあるため、当事務所は経営者が自分で組み立てる過程を支援する形をとっています。

A.補助金は目的(販路開拓・設備投資・IT導入・事業承継・新事業など)と事業者の規模によって対象が異なり、公募の時期・要件・補助率は年度ごとに変わります。2026年11月6日時点で続いている制度も、次の公募で内容が変わることがあるため、「やりたい投資・取組み」を先に決め、それに合う補助金を最新の公募要領で確認する順序が実務的です。補助金は後払い(実施後の精算)が原則で、自己資金や融資で先に支出する必要がある点、採択後の実績報告と経理処理に手間がかかる点も含めて検討します。

A.正直に報告してください。金融機関は計画が外れること自体は織り込んでおり、見ているのは「ずれの原因を経営者が把握し、対応を打っているか」です。試算表に計画との比較と、原因(客数・単価・原価・固定費のどこか)、対応(値上げ・経費削減・販促・資金調達)を添えて説明すれば、むしろ信頼が高まります。返済が苦しくなる見込みなら、延滞する前に相談することが重要で、返済条件の見直しには経営改善計画が使われます。黙って延滞することが最も信用を損ないます。

「経営計画書・事業計画は必要?」まとめ

  • 計画書は融資・補助金・公的な計画の認定・社内の方向づけ・承継・経営改善で使い、どの場面でも中心は売上・費用・利益・返済・資金の数字。一つ作れば体裁を変えて使える
  • 金融機関が見るのは、返済原資(税引後利益+減価償却費)が年間返済額を上回るか、売上の根拠(客数×単価の積み上げ)、資金使途の妥当性(見積書・月商の何か月分)、経営者が数字を説明できるか
  • 簡易版は事業概要・月別売上計画・変動費と固定費・利益・借入返済・月別資金繰り・行動計画の7項目をA4で2〜3枚。月末残高の最低月と返済原資を確認する
  • 作った後は月次で実績と比較し、四半期で見直す。自分で説明できる数字だけ、保守・標準・楽観の3パターン、1枚目に要約、前提の明記、行動計画との結びつけで形だけの計画書を避ける
  • 認定支援機関として、融資・補助金・経営力向上計画等・経営改善計画の作成支援と、作った後の月次の伴走を行う。数字は経営者自身が組み立て、税理士が整合と税務・資金繰りを確認する

融資・補助金・経営判断に使える数字の計画書は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「融資の面談までに、自分で説明できる計画書を作りたい」「補助金の事業計画の数字を整えたい」「作った計画を毎月の経営に活かしたい」など、お気軽にご相談ください。認定支援機関として、計画の作成から金融機関への報告、月次の伴走まで代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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