個人事業主の法人化はいくらから?利益・売上の目安と、税金・社会保険料を含めた比較シミュレーション

個人事業主の法人化はいくらから?利益・売上の目安と、税金・社会保険料を含めた比較シミュレーション

横浜市で会社設立と法人化のサポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「売上が伸びてきたので法人化を考えているが、いくらから得になるのか」「法人にすると社会保険料で損をすると聞いた」「維持費はどれくらいかかるのか」――個人事業主・フリーランスの方から最も多くいただくご相談の一つです。「利益○○万円を超えたら法人化」という目安はよく語られますが、答えは一つではありません。税金だけでなく社会保険料と維持費を含めて、ご自身の数字で比べることが必要です。

この記事では、法人化で変わる税金と費用、利益300万・500万・800万・1,000万円の仮定例で個人と法人の手取りを社会保険料込みで比較した結果、税金以外の判断軸、法人化しないほうがよいケース、判断のためのシミュレーションに必要な資料と当事務所の面談の進め方を解説します。本記事は2026年11月6日時点の税率・社会保険料率に基づく仮定例で、実際の金額は売上の構成・家族構成・自治体によって変わります。設立前に決めること全般は「会社設立前に決める7つのこと」をご覧ください。

法人化で変わる税金・費用

  • 所得税・住民税 → 法人税等+役員報酬の所得税・住民税:個人事業では利益全体に所得税の累進税率(5〜45%)と住民税10%がかかります。法人化すると、利益を「役員報酬(社長の給与)」と「法人に残す利益」に分け、役員報酬には給与所得控除を引いたうえで所得税・住民税が、法人の利益には法人税等(所得800万円以下でおおむね23%前後)がかかります。所得を分けることで累進税率の負担が下がるのが、法人化の税金面の効果です。
  • 個人事業税 → 法人事業税:個人事業税(利益290万円超に5%)はなくなり、法人の事業税が法人税等の中に含まれます。
  • 消費税:資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として設立1期目・2期目は消費税の納税義務がありません(インボイス登録をすると課税事業者になります。詳しくは「設立初年度の消費税」)。
  • 国民健康保険・国民年金 → 健康保険・厚生年金:法人は社長1人でも社会保険の加入が義務になります。保険料は役員報酬の約30%(協会けんぽ・神奈川)で、半分を会社、半分を本人が負担します。個人事業の国民健康保険・国民年金より負担が増えることが多い一方、将来の厚生年金が増える、扶養家族の保険料がかからない、といった面もあります。
  • 維持費:赤字でも法人住民税の均等割(年7万円程度)がかかり、決算申告の複雑さから税理士費用も個人より高くなるのが一般的です。社会保険の手続きや給与計算の手間も加わります。

利益別の手取り比較(仮定例・社会保険料込み)

前提:45歳・単身、横浜市在住、青色申告(65万円控除)、所得控除は社会保険料控除と基礎控除(2026年分・令和8年度税制改正による引上げ後の金額)のみ。法人化後は役員報酬を利益の7〜8割程度に設定し、残りを法人に残します。社会保険料率は約29.8%(本人・会社で折半)、法人税等は約23%、均等割7万円とし、税理士費用の差は含めていません。「手取り」は、個人事業では利益から税金と社会保険料を引いた額、法人では社長の手取り(役員報酬-税金-社会保険料本人負担)と法人に残る税引後利益の合計です。

  • 利益300万円:個人事業の手取り約230万円(税金約19万円・社会保険料約51万円)。法人(役員報酬240万円)は社長の手取り約195万円+法人に残る約13万円=約208万円。法人化で約22万円の減少。
  • 利益500万円:個人事業の手取り約365万円(税金約59万円・社会保険料約76万円)。法人(役員報酬360万円)は約287万円+約61万円=約348万円。約18万円の減少。
  • 利益800万円:個人事業の手取り約533万円(税金約155万円・社会保険料約112万円)。法人(役員報酬600万円)は約465万円+約80万円=約545万円。約12万円の増加。
  • 利益1,000万円:個人事業の手取り約648万円(税金約221万円・社会保険料約131万円)。法人(役員報酬720万円)は約543万円+約128万円=約671万円。約23万円の増加。

この仮定例では、社会保険料まで含めると利益700〜800万円あたりで損益が入れ替わり、1,000万円で年20万円強の差になります。税理士費用の増加分(年10〜20万円程度)を加味すると、分岐点はさらに上がります。「税金だけ」で比べると500〜600万円で法人が有利に見えますが、社会保険料の負担増で相殺されるため、利益が安定して800万円を超える見込みがあるかどうかが、税金面での一つの目安です。なお、役員報酬の設定、家族への給与、退職金の準備、消費税の免税期間の活用などで、法人の側に有利な要素を加えられる余地はあります(役員報酬の決め方は「設立初年度の役員報酬の決め方」)。

個人事業と法人化後の税金・社会保険

法人化すると、利益を役員報酬と法人に残す利益に分けて課税されます。

個人事業のままの場合利益全体に所得税(5〜45%)と住民税10%、個人事業税がかかります。保険は国民健康保険・国民年金です。
法人化して所得を分ける役員報酬には給与所得控除後に所得税・住民税、法人の利益には法人税等がかかり、社会保険料は報酬の約30%を折半します。
本文の仮定例では、社会保険料まで含めると利益700〜800万円あたりで有利・不利が入れ替わります。
本文の説明と仮定例を図にまとめたものです。法人は赤字でも均等割(年7万円程度)がかかります。

税金以外の判断軸

  • 信用・取引先の要請:法人でないと取引できない、口座を開設しにくい、入札に参加できないといった事情があれば、税金の損得にかかわらず法人化の理由になります。
  • 採用:社会保険に加入できる法人のほうが、従業員を採用しやすい傾向があります。従業員を雇う予定があれば、法人化と同時に労務の体制を整えます。
  • 融資:法人のほうが決算書の信頼性が高く見られ、融資の選択肢が広がることがあります。ただし創業期は個人・法人を問わず創業計画書と自己資金が見られます。
  • 事業承継・売却:法人は株式の譲渡や相続で事業をそのまま引き継げます。個人事業は事業の引き継ぎに資産ごとの手続きが必要です。
  • 責任の範囲:法人は出資の範囲での有限責任が原則ですが、金融機関の借入では社長の個人保証を求められることが多く、実態として責任が限定されない場面もあります。
  • 経費の範囲と退職金:法人では社長の退職金、生命保険の一部、社宅などが経費や損金として扱える場面が増えます。

法人化しないほうがよいケース

  • 利益が安定して500万円を超える見込みがない、または年によって大きく変動する。
  • 社会保険料の負担増が手取りを圧迫し、生活費を確保できない。
  • 数年以内に事業をやめる、または縮小する予定がある(法人の解散・清算にも費用と手続きがかかります)。
  • 医師・歯科医師など、個人にしか使えない特例(社会保険診療の概算経費など)の効果が大きい。
  • 経理・社会保険・給与計算の手間を増やしたくない、または任せる体制が作れない。
  • 過去の申告に未申告や未納がある(先に整理が必要です。「無申告のまま法人設立はできる?」)。

当事務所では、必ず法人化を勧めることはしていません。数字で比べて「今はまだ個人のほうがよい」という結論になることも多くあります。

シミュレーションに必要な資料と、当事務所の面談の進め方

法人化の検討には、次の資料をお持ちいただくと、その場で概算の比較ができます。

  • 直近2〜3年分の確定申告書と青色申告決算書(利益の推移を見ます)。
  • 今年の売上・利益の見込み(試算表や通帳でも構いません)。
  • 家族構成(配偶者・扶養家族の有無、家族が事業を手伝っているか)。
  • 国民健康保険料・国民年金の年間納付額。
  • 取引先からの法人化の要請、採用や融資の予定、将来の事業の見通し。

面談では、これらをもとに個人事業を続ける場合と法人化する場合の税金・社会保険料・維持費を比較し、法人化する場合は役員報酬の目安、資本金、決算月、設立の時期(消費税の免税期間を最大限使える時期)までご案内します。法人化を決めていなくてもご相談いただけます。ご依頼を検討されている方の面談・お見積りは無料です。サービスと料金は会社設立サポートのページ、横浜市の設立費用の軽減制度は「横浜市で会社設立費用を抑えるには?」をご覧ください。

まとめ:社会保険料込みの分岐点は利益700〜800万円前後。自分の数字で比べてから決める

法人化は、所得を役員報酬と法人の利益に分けることで累進税率の負担を下げる一方、社会保険料(約30%を折半)と均等割・税理士費用などの維持費が増えます。仮定例では利益300万・500万円では法人化で手取りが減り、800万円でわずかに増え、1,000万円で年20万円強の増加となり、分岐点は700〜800万円前後でした。税金以外では、取引先の要請・採用・融資・承継・退職金が法人化の理由になり、利益が不安定、社会保険料の負担が重い、数年で事業をやめる予定、といった場合は個人のままが適切です。直近の申告書と今年の見込みを持って、ご自身の数字で比べてから決めてください。

「個人事業主の法人化はいくらから?」まとめ

  • 法人化で変わるもの:所得税の累進→役員報酬と法人利益に分散、個人事業税→法人事業税、消費税は設立2期まで原則免税、国保・国民年金→社会保険(約30%折半)、均等割7万円と税理士費用
  • 仮定例(単身45歳・横浜市・青色65万・社保込み・税理士費用除く):利益300万円▲22万、500万円▲15万、800万円+9万、1,000万円+23万
  • 税金だけなら500〜600万円で法人有利に見えるが、社会保険料で相殺。分岐点は700〜800万円前後、安定して800万円超が一つの目安
  • 税金以外の軸:取引先の要請・採用・融資・承継・退職金。個人保証で責任は限定されないことも
  • 法人化しないほうがよい:利益不安定・社保で生活費圧迫・数年で廃業予定・概算経費など個人の特例が大きい・未申告がある
  • 面談には申告書2〜3年分・今年の見込み・家族構成・国保年金の納付額を。法人化を決めていなくても相談可

「法人化の判断」に関するよくある質問

A.「売上1,000万円」は消費税の課税事業者になる基準で、法人化の損得とは別の話です。ただ、個人で課税売上が1,000万円を超えると2年後から消費税がかかるため、そのタイミングで資本金1,000万円未満の法人を設立すると、法人の1期目・2期目は原則として免税になり、結果として免税期間を延ばせる、という使われ方をしてきました。インボイス制度の開始後は、取引先が課税事業者の場合に登録を求められることが多く、登録すると免税の効果はなくなります。法人化の損得は利益と社会保険料で判断し、消費税の免税は「使えれば使う」程度に考えるのが現実的です。

A.配偶者が実際に業務を行っていれば、役員報酬や給与を分けることで所得税の累進負担をさらに下げられ、配偶者の分の給与所得控除も使えます。ただし、配偶者の報酬にも社会保険料がかかる(一定額以下なら社長の扶養に入れる場合もあります)、勤務実態と報酬額の妥当性が税務調査で確認される、個人事業の青色事業専従者給与でも同様の効果は得られる、といった点を踏まえて比較する必要があります。「家族に分ければ得」とは限らず、家族構成と業務の実態を含めてシミュレーションします。

A.税金面では、個人事業の利益が安定して分岐点を超えた年の翌年以降が目安です。年の途中で法人化すると、その年は個人の確定申告と法人の決算の両方が必要になり、個人側の経費の按分や資産の引き継ぎの処理も加わるため、1月の法人化が事務的には最も整理しやすい一方、消費税の免税期間や繁忙期を避けることを優先する場合もあります。また、融資や許認可の予定があれば、その前後で法人化の時期を調整します。法人成りの具体的な手続きは「法人成りの手続き」で解説しています。

法人化の損得を数字で比べるなら、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「自分の利益で法人化が得か知りたい」「社会保険料込みで比べてほしい」「法人化するなら時期と役員報酬を相談したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・フリーランスを中心に、代表税理士が直接対応します。法人化を決めていなくても構いません。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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