相続税申告の税理士報酬の相場|遺産総額別の目安・報酬シミュレーションと加算報酬の例
更新日:2026年11月7日
この記事の要点
- 相続税申告の税理士報酬は、一般に「遺産総額の0.5〜1%程度」が目安といわれます。2002年に税理士報酬の規定が廃止され、現在は各事務所が独自に料金を決めているため、見積額には幅があります。
- 遺産総額1億円なら目安は50万〜100万円程度(税抜)。ここに土地の数・相続人の数・非上場株式・申告期限までの残り期間・書面添付などの加算が付くのが一般的です。
- 税理士報酬は相続人が負担する費用で、相続税の債務控除の対象にはなりません。所得税の経費にも原則なりません。
- 見積りを比べるときは、「遺産総額」の定義、加算項目、消費税、含まれる業務の範囲をそろえて確認します。
横浜市で相続税申告のサポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「税理士に頼むといくらかかるのか」「見積りをもらったが、高いのか安いのか分からない」「報酬は誰が払うのか、相続財産から出してよいのか」――ご家族が亡くなり、税理士を探し始めた方から最初にいただくご質問の多くは、費用に関するものです。
この記事では、相場の目安とその背景、遺産総額別の報酬例、加算になりやすい項目、報酬の負担と税務上の扱い、見積りの取り方を順に整理します。申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までの流れは「相続税申告の流れと10か月のスケジュール」をあわせてご覧ください。
本記事は2026年11月7日時点の税理士法・相続税法・所得税法と実務に基づいています。相場の数字は業界で一般に言われている目安であり、当事務所の料金ではありません。
相続税申告の税理士報酬の相場|「遺産総額の0.5〜1%程度」が一般的な目安
相続税申告の税理士報酬は、一般に「遺産総額の0.5〜1%程度」が目安といわれています。遺産総額1億円なら50万〜100万円程度(税抜)というイメージです。ただし、この数字は公的な統計や規定に基づくものではなく、多くの事務所の料金表から導かれた経験的な目安です。
報酬に幅がある理由|2002年に税理士報酬の規定が廃止された
かつて税理士の報酬には、税理士会の会則で定める上限がありました。1980年(昭和55年)の税理士法改正で、会則に「税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定」を定めることが必須事項とされ(旧税理士法第49条の2第2項第7号)、各税理士会はこれに基づく報酬規則を設けていました。実務ではこの規則表が報酬の目安として広く使われていたといわれています。
その後、2001年(平成13年)公布の「税理士法の一部を改正する法律」(平成13年法律第38号)でこの第7号は削除され、2002年(平成14年)4月1日に施行されました。各税理士会の報酬規則も2002年3月31日をもって廃止され、以降は税理士が自己の責任で報酬額を算定し、依頼者に請求する仕組みになっています。
出典:衆議院「税理士法の一部を改正する法律(昭和55年法律第26号)」、衆議院「税理士法の一部を改正する法律(平成13年法律第38号)」、近畿税理士会「釜山地方税務士会からの質問事項及び近畿税理士会の回答」
つまり、現在の報酬に公定価格はなく、各事務所が独自に料金を設定しています。多くの事務所は「遺産総額の区分ごとの基本報酬+財産の内容に応じた加算報酬」という体系を採っており、「0.5〜1%」はこの基本報酬の分布を言い表した目安です。
見積りの前提になる「遺産総額」の定義を確認する
見落としやすいのが、料金表の「遺産総額」が何を指すかです。多くの事務所では、基礎控除や債務を差し引く前、小規模宅地等の特例などの評価減を適用する前の、プラスの財産の合計額(生命保険金などを含む)を基準にしています。特例で税額が大きく下がる案件でも、報酬の基準額は下がりません。事務所によって定義が異なるため、見積りを比較するときは同じ定義で計算されているかを確認してください。
遺産総額別の報酬の目安と報酬シミュレーション
遺産総額別の報酬の目安(一般的な目安)
「遺産総額の0.5〜1%程度」を遺産総額ごとに当てはめると、次の表のようになります。業界で一般に言われている目安の幅であり、特定の事務所の料金ではありません。
| 遺産総額 | 基本報酬の目安(税抜) |
|---|---|
| 5,000万円 | 25万〜50万円 |
| 7,000万円 | 35万〜70万円 |
| 1億円 | 50万〜100万円 |
| 1億5,000万円 | 75万〜150万円 |
| 2億円 | 100万〜200万円 |
| 3億円 | 150万〜300万円 |
| 5億円 | 250万〜500万円 |
国税庁の統計では、令和6年分に相続税がかかった被相続人1人当たりの課税価格の平均は約1.4億円で、基本報酬の目安は70万〜140万円程度になります。なお、5,000万円前後の案件では最低報酬額を設ける事務所が多く下限はこれより高くなりがちで、3億円を超える高額帯では料率が下がり、個別見積りになるのが一般的です。
報酬シミュレーション(例・仮定)
料金体系が総額にどう影響するか、仮定の料金表で計算します。以下の料率と加算額はすべて説明のための仮定であり、当事務所を含む特定の事務所の料金ではありません。
仮定する料金表:基本報酬=遺産総額の0.7%、土地加算=1利用単位あたり5万円、相続人加算=2人目以降1人あたり基本報酬の10%、書面添付=5万円、消費税10%。
| 例(仮定) | 前提 | 計算(税抜) | 合計(税込) | 遺産総額比 |
|---|---|---|---|---|
| 例A | 遺産総額8,000万円、自宅の土地1か所、相続人2人(配偶者と子) | 基本56万円+土地5万円+相続人5.6万円=66.6万円 | 約73.3万円 | 約0.92% |
| 例B | 遺産総額1億5,000万円、土地3か所(自宅・貸家・駐車場)、相続人3人、書面添付あり | 基本105万円+土地15万円+相続人21万円+書面添付5万円=146万円 | 約160.6万円 | 約1.07% |
基本報酬の料率が0.7%でも、加算と消費税を含めた総額は遺産総額の1%前後になります。「0.5〜1%」という相場を見るときは、基本報酬だけの話か、加算と消費税を含めた総額かを意識してください。
報酬が加算になりやすい項目
基本報酬に加算が付く主な項目は次のとおりです。ご自身の案件にどれが当たるかを把握しておくと、見積額の妥当性を判断しやすくなります。
| 加算項目 | 加算になりやすい理由 | 見積りで確認すること |
|---|---|---|
| 土地の数 | 1利用単位ごとに路線価・倍率、形状、貸家建付地などを個別に評価するため作業量が増える | 「1か所」の数え方(筆数か利用単位か)、現地確認の費用 |
| 相続人の数 | 申告書の枚数、説明の回数、遺産分割の調整が増える | 何人目から付くか |
| 非上場株式(自社株) | 会社の決算書に基づく株価評価が必要で、評価が多層になりやすい | 1社あたりの加算額、子会社の扱い |
| 申告期限が近い | 期限3か月以内などの受任は短期間で評価を行うため割増が付くことが多い | 割増の基準と割増率 |
| 書面添付(税理士法第33条の2) | 税理士が申告内容の確認事項を書面にして添付する制度で、作成に手間がかかる | 書面添付の有無と加算額 |
| 遺産分割協議書の作成 | 税理士業務とは別の書類作成業務のため別料金になることが多い | 誰が作るか(行政書士資格の有無) |
| その他 | 準確定申告、名義預金・生前贈与の調査、未分割申告後の更正の請求、延納・物納など | 発生条件と金額の明示 |
書面添付について補足します。税理士法第33条の2の書面が添付された申告書は、国税庁の事務運営指針により、税務署が調査通知を行う前に税理士への意見聴取が行われ、その結果調査の必要がないと認められれば「現時点では調査に移行しない」旨の連絡がされる運用です。加算が付く一方、相続人の税務調査の負担を軽くできる可能性がある制度です。
出典:国税庁「資産税事務における書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」
土地の評価は「不動産(土地・建物)の相続税評価の基本」、遺産分割協議書は「遺産分割協議書の作り方」で詳しく説明しています。
税理士報酬は誰が払う?相続財産から出せる?債務控除や経費になる?
誰が払うか|法律上の決まりはなく、依頼した相続人が負担する
税理士報酬を誰が負担するかについて、法律上の決まりはなく、契約上は依頼した相続人が支払う義務を負います。実務では、相続人全員が共同で依頼し、取得する財産の割合(相続分)に応じて按分する方法が最も多く、代表相続人が立て替えて遺産分割のときに精算するやり方もあります。負担方法は、遺産分割協議書や合意書に書き残しておくと後の行き違いを防げます。
相続財産から出せるか|遺産分割前の払戻し制度も使える
税理士報酬を亡くなった方の預貯金から支払うことは可能です。ただし、金融機関が死亡を把握すると口座は凍結され、遺産分割が終わるまで原則として相続人が単独で払い戻すことはできません。
このときに使えるのが、2019年7月1日から始まった「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(民法第909条の2)です。各相続人は、相続開始時の預貯金の額×3分の1×自分の法定相続分までの金額を、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口で単独で払い戻せます(同一の金融機関からは150万円が上限)。法務省の資料では、葬儀費用や生活費、相続債務の弁済といった資金需要に対応するための制度と説明されています。
出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」、法務省「遺産分割前の払戻し制度について」
なお、払い戻したお金を税理士報酬に充てても、相続税の申告では相続開始日現在の預貯金残高を財産として計上します。
相続税の債務控除の対象にはならない
相続税の計算では、亡くなった方の借入金や未払金などの債務を遺産総額から差し引けます(債務控除)。しかし、相続税申告の税理士報酬はこの対象になりません。
国税庁のタックスアンサーは、差し引くことができる債務を「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるもの」と説明しています(相続税法第13条・第14条)。税理士報酬は、相続開始後に相続人が契約して生じる相続人自身の債務であり、亡くなった時点に存在した被相続人の債務ではないため、要件を満たしません。
葬式費用は債務ではありませんが、例外的に遺産総額から差し引けます。ただし火葬・埋葬・納骨の費用、通夜の費用、お寺への読経料など葬式に直接関係するものに限られ、税理士報酬は含まれません。同じ理由で、相続登記の司法書士報酬や登録免許税、遺産分割に関する弁護士費用も対象外です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」、国税庁 タックスアンサー No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」
所得税の経費にも原則ならない
相続税申告の税理士報酬は、相続人の所得税の計算上も、原則として必要経費や取得費になりません。相続税の申告は所得を得るための業務ではないからです。
誤解されやすい点を2つ補足します。1つ目は、相続した不動産を売却するときの譲渡所得です。国税庁のタックスアンサーでは、業務に使われていない土地建物を相続で取得した際の登記費用や不動産取得税は取得費に含まれるとされていますが、相続税申告の税理士報酬についてこのような取扱いは示されておらず、取得費に含めないのが一般的な整理です。支払った相続税額の一部を取得費に加算できる特例(取得費加算)は別にありますので、「相続した不動産を売却するときの税金」をご覧ください。
2つ目は、賃貸不動産を相続した場合です。相続後の不動産所得の確定申告を依頼した報酬はその業務の必要経費になり得ますが、相続税申告の報酬は必要経費になりません。同じ税理士に依頼する場合は、請求書で業務ごとに金額を分けてもらうと整理しやすくなります。
出典:国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
見積りの取り方とチェックポイント|当事務所の料金案内
見積りを依頼するときに伝える情報
財産の概要が分かれば、初回相談の場で概算を出せる事務所が多いです。次の情報を整理して伝えると、精度の高い見積りが得られます。
- 亡くなった日と、相続人の人数・続柄
- 不動産の数と所在地(自宅・貸家・駐車場・農地など、利用の区分ごとに)
- 預貯金のおおよその合計額と金融機関の数、上場株式・非上場株式(自社株)の有無
- 生命保険金・死亡退職金、借入金、葬式費用のおおよその金額
- 遺言書の有無、遺産分割の話し合いの状況、生前贈与の有無
「相続税申告に必要な書類一覧」にある固定資産税の課税明細書や通帳のコピーが手元にあると、財産の概要が固まり、見積りの前提がぶれにくくなります。
見積りを比較するときのチェックポイント
複数の見積りを取ったときは、金額の大小だけでなく、次の点をそろえて比べてください。
- 「遺産総額」の定義が同じか(基礎控除前・特例適用前・債務控除前か)
- 加算項目と発生条件が見積書に明示されているか
- 消費税込みの総額か、税抜か
- 含まれる業務の範囲(遺産分割協議書の作成、準確定申告、分け方の試算、申告後の税務調査対応)
- 追加費用が発生する条件(財産が後から見つかった場合、未分割で申告する場合など)
- 書面添付の有無、支払いの時期、誰が担当するか
もう一つ、価格だけで選ぶことの注意点です。相続税は、土地の評価や小規模宅地等の特例、二次相続を見通した分け方によって、税額が数十万円から数百万円単位で変わる税目です。報酬の差が数万円でも、検討の深さによる税額の差はそれ以上になることがあります。見積りの説明の際に、ご自身の財産の評価上の論点を具体的に話してくれるかどうかも判断材料にしてください。
当事務所の料金案内
当事務所の相続税申告の料金は、基本報酬と加算の考え方を料金案内のページに掲載しています。初回相談・お見積りは無料で、お見積りの際には上のチェックポイントの各項目を書面でお示しします。
「相続税申告の税理士報酬」に関するよくある質問
相続税がかかるかどうか分からない段階で税理士に相談すると、費用はかかりますか? A.当事務所では、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかの判定は無料で行っています。一般的にも初回相談を無料とする事務所は多く、「申告は不要」と分かれば費用は発生しません。
税理士報酬を抑える方法はありますか? A.早めに依頼すること(期限が近い案件の割増を避けられます)、戸籍や残高証明書などの資料をご自身で集めること、不要なオプションを外すことの3つです。一方、土地の評価や特例の検討を省く形で安くすることは、税額に跳ね返るためおすすめしません。
兄弟3人で相続します。報酬は代表者が全額払わなければいけませんか? A.契約上は依頼者が支払う義務を負いますが、相続人の間でどう分担するかは自由です。相続分に応じて按分する方法が最も一般的で、代表者が立て替えて遺産分割のときに精算することもできます。どのように分担しても、税理士報酬は相続税の債務控除の対象にはなりません。
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参考(一次資料)
- 衆議院「税理士法の一部を改正する法律(昭和55年法律第26号)」(旧第49条の2第2項第7号「税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定」の追加)
- 衆議院「税理士法の一部を改正する法律(平成13年法律第38号)」(第49条の2第2項第7号の削除、平成14年4月1日施行)
- 近畿税理士会「釜山地方税務士会からの質問事項及び近畿税理士会の回答」(報酬規則の廃止と2002年4月1日以降の報酬決定の原則)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」
- 国税庁 タックスアンサー No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」
- 国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
- 国税庁「資産税事務における書面添付制度の運用に当たっての基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」
- 国税庁「令和6年分における相続税の申告事績の概要」
- 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
- 法務省「遺産分割前の払戻し制度について」
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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