個人事業主に税理士は必要か・いつから?いらない人/頼んだほうがいい人の判断基準と費用相場
更新日:2026年11月7日
この記事の要点
- 売上が小さく取引が単純で、会計ソフトを使って期限内に青色申告ができているなら、税理士はいなくても回ります。ただし、記帳と帳簿の保存は白色申告でも全員の義務です。
- 消費税の課税事業者になる・インボイス登録をしている・融資や法人化を考えている・経理に時間を取られている方は、年1回のスポットでも頼んだほうが、費用以上の差が出やすいです。
- 頼む時期の目安は「開業時」「課税事業者になる前の年」「売上1,000万円前後」「人を雇う時」の4つ。消費税の届出は前の年のうちに動く必要があります。
- 費用は、確定申告のみのスポットと月次顧問で大きく違います。一般に言われる相場の幅と、見積りで確認したい点を表で整理しました。
横浜市で個人事業主・フリーランスの確定申告と税務顧問をお手伝いしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
開業1〜3年目の方から、「売上が小さいのに税理士をつける意味はありますか」「確定申告だけ頼むといくらですか」「いつから頼むものですか」というご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、個人事業主の全員に税理士が必要なわけではありません。売上規模が小さく、取引が単純で、会計ソフトで期限内に申告できているなら、ご自身でやったほうが合理的です。一方で、消費税の課税事業者になる、融資を受ける、法人化を考えるといった「判断が増える局面」では、年1回でも税理士に頼んだほうが、報酬を払ってもなお手元に残るお金と時間が増えることが多いです。
この記事では、「いらない人」と「頼んだほうがいい人」の条件、「いつから」の目安、スポットと月次顧問の費用相場を一度に整理します。本記事は2026年11月7日時点の制度に基づいています。相場の数字は業界で一般に言われている目安で、当事務所の料金ではありません。
税理士がいらない人の条件
次の4つにほぼ当てはまるなら、現時点で税理士は必須ではありません。
売上規模が小さい
年間の売上が数百万円程度で、所得税の計算が所得控除と青色申告特別控除で完結するなら、税理士に頼むことで減らせる税金は大きくありません。報酬を払って節税の提案を受けても、元を取りにくい規模です。
取引が単純
売上先が数社で入金は銀行振込、経費は交通費・通信費・消耗品が中心、在庫や高額な固定資産がない。こうした取引なら仕訳に迷う場面は少なく、会計ソフトの自動仕訳で十分に処理できます。
会計ソフトで回っている
freee・マネーフォワード・弥生などのクラウド会計で銀行口座とカードを連携し、レシートはスマホで撮影して取り込む。この運用が崩れずに回り、毎年3月15日の期限内にe-Taxで貸借対照表・損益計算書を添えて申告できているなら、青色申告特別控除65万円も自力で確保できています(65万円控除の要件は複式簿記・期限内申告・e-Tax送信など。参考:国税庁タックスアンサーNo.2072)。
ソフト選びで迷っている方は、「freee・マネーフォワード・弥生、個人事業主はどれを選ぶ?」で比較しています。
消費税の免税事業者である
消費税は、原則として前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら納税義務が免除されます。免税事業者で、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録もしていなければ消費税の申告は不要で、申告は所得税だけです。
「いらない」と判断する前に確認したいこと
ここで一つ、正直にお伝えしておきます。税理士がいらない、は、記帳をしなくていい、ではありません。事業所得・不動産所得・山林所得のある方は、白色申告でも、申告の必要がない方でも、全員に記帳と帳簿・書類の保存が義務づけられています。帳簿は7年、請求書・領収書などの書類は5年の保存です(参考:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」)。
「税理士はいらない」と言えるのは、この義務をご自身で果たせている方です。領収書を箱に入れたまま申告直前にまとめて入力している状態なら、「いらない」のではなく「まだ頼んでいないだけ」かもしれません。
税理士に頼んだほうがいい人の条件
次のいずれかに当てはまる方は、頼むことで費用以上の価値が出やすい方です。
消費税の課税事業者になる・なった
基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から消費税の課税事業者になります。前年の1月1日〜6月30日(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合も課税事業者です(特定期間の判定は、給与等支払額で行うこともできます。参考:国税庁タックスアンサーNo.6501)。
課税事業者になると、申告書が1つ増えるだけでなく、「一般課税か簡易課税か」という判断が入ります。簡易課税制度選択届出書は、原則として適用したい年の前年末までに提出が必要で、逃すとその年は選べません。選択を間違えると、納税額が数万円から数十万円単位で変わることがあります。
インボイス(適格請求書発行事業者)に登録している
インボイス登録をしていると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも消費税の納税義務は免除されません。免税事業者から登録した個人事業主の多くが使ってきた「2割特例」(納付税額を売上税額の2割にする特例)は、令和8年分(2026年分)の確定申告までです。令和9年分・令和10年分は売上税額の3割を納める「3割特例」に移り、その後は一般課税か簡易課税を選ぶことになります(参考:国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」)。
インボイス登録をしている個人事業主は、これから数年、「どの計算方法が有利か」を毎年考える必要があり、ここは税理士に頼む価値が高い部分です。詳しくは「3割特例とは?いつまで使える?対象となる個人事業主と簡易課税との違い」をご覧ください。
融資を受ける・受けたい
日本政策金融公庫や銀行の融資では、確定申告書と青色申告決算書が審査の土台になります。事業と家計が混ざった帳簿や、利益が正しく表れていない決算書は審査に不利です。税理士が関与した決算書と、試算表をすぐ出せる体制は、融資の場面で効いてきます。
法人化を検討している
法人化の分岐点は、所得税・住民税だけでなく社会保険料まで含めて比べる必要があります。当事務所の別記事の仮定例では、利益700〜800万円前後で損益が入れ替わる結果になりました(「個人事業主の法人化はいくらから?」)。この試算と法人化の時期の判断は、ご自身で正確に行うのが難しい部分です。
税務調査が不安
現金商売をしている、過去に無申告や期限後申告がある、自宅兼事務所や車などの家事関連費の割合に自信がない。こうした方は、申告の時点で「説明できる根拠」を整えておくことが安心につながり、調査の連絡を受けたときの対応も任せられます。
経理に時間を取られている
月に10時間を経理に使っているなら、その時間を本業に充てれば売上がいくら増えるか。この比較で、税理士報酬が「時間の買い戻し」になる方は多いです。確定申告の時期に本業が止まる方は、年1回のスポット依頼だけでも効果がはっきり出ます。
従業員やアルバイトに給与を払っている
人を雇うと、給与から所得税を源泉徴収して納める義務が生じます(参考:国税庁タックスアンサーNo.2502)。年末調整、法定調書、住民税の特別徴収と手続きが増えるため、顧問契約に切り替える方が多いタイミングです。
「いつから」頼むかの目安
「必要になってから」で間に合うものと、「前の年のうちに」動かないと手遅れになるものがあります。
| タイミング | 起きること | 税理士に相談する価値 |
|---|---|---|
| 開業時 | 開業届、青色申告承認申請(開業日から2か月以内)、会計ソフトの初期設定、事業用口座の分離 | 初期設定を間違えると毎年の手間が増える。スポット相談で十分 |
| 課税事業者になる前の年 | 基準期間・特定期間の判定、簡易課税の届出、インボイス登録の判断 | 届出は前年末まで。年が明けてからでは選べない |
| 売上1,000万円前後 | 翌々年から課税事業者、法人化の試算、節税策の検討 | 判断で納税額が数十万円単位で変わりうる |
| 従業員を雇う時 | 給与支払事務所等の開設届出(1か月以内)、源泉徴収、年末調整、社会保険 | 毎月の手続きが発生。顧問に切り替える方が多い |
開業時
青色申告承認申請書は、1月16日以後に開業した場合、開業日から2か月以内が期限です(参考:国税庁タックスアンサーNo.2090)。逃すと初年度は白色申告になり、青色申告特別控除や純損失の繰越控除が使えません。開業届の提出期限は、開業した年分の所得税の確定申告期限までとされています。開業時は、届出の確認と会計ソフトの初期設定をスポットで相談する形で十分です。
課税事業者になる前の年・売上1,000万円前後
消費税の届出は「前の年のうちに」が原則です。売上が1,000万円を超えた年の翌年には、翌々年からの課税事業者化に備えて、簡易課税を選ぶかを決めておく必要があります。所得税の税率も上がってくる規模なので、法人化の試算や小規模企業共済・iDeCoの活用も、このタイミングでまとめて確認すると効率的です。
従業員を雇う時
給与の支払いを始めたら、給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に提出し、毎月(納期の特例を受けていれば半年ごと)源泉所得税を納めます。経理の量が一段増えるため、スポットから顧問へ切り替える方が多い時期です。
費用相場:確定申告のみ(スポット)と月次顧問の違い
税理士の報酬に法定の基準はなく、事務所ごとに決められています。以下は、業界で一般に言われている目安の幅です(当事務所の料金ではありません)。
| 依頼の形 | 一般に言われる目安 | 含まれることが多い内容 |
|---|---|---|
| 確定申告のみ(記帳はご自身で) | 年5万〜10万円程度 | 決算書・申告書の作成と提出、申告前の内容確認 |
| 確定申告+記帳代行(領収書丸投げ) | 年10万〜20万円程度 | 記帳、決算書・申告書の作成と提出 |
| 消費税申告の追加 | 数万円程度の加算 | 消費税申告書の作成、計算方法の検討 |
| 月次顧問(売上1,000万円前後まで) | 月1万〜3万円程度+決算・申告料(顧問料の4〜6か月分程度) | 月次の帳簿確認、随時の相談、納税予測、決算・申告 |
売上規模、仕訳の数、業種(在庫や現金商売の有無)、資料の整理状況で大きく上下します。年間総額では、スポットは5万〜20万円程度、月次顧問は20万〜40万円程度の幅が一般的な目安です。
スポットが向く人・顧問が向く人
年に一度、申告書を正しく仕上げることが目的で、年の途中の相談がほとんど要らない方は、スポットで十分なことが多いです。一方、納税額の予測が必要な方、融資や法人化を控えている方、従業員がいる方は顧問が向いています。顧問料は固定費になりますが、「3月に慌てる」ことがなくなり、節税策を年内に打てるのが利点です。
見積りで確認したいこと
金額の比較より先に、「何が含まれ、何が別料金か」をそろえることが大切です。記帳代行、消費税申告、年末調整、税務調査の立会い、年の途中の相談の有無で、同じ「年10万円」でも中身が大きく違います。詳しくは「税理士の顧問料・確定申告料に何が含まれる?」で整理しています。
当事務所の年1回スポット対応と料金の考え方
当事務所では、個人事業主の方向けに、年1回の確定申告のみをお引き受けするスポットプランと、月次でサポートする税務顧問プランの2つをご用意しています。
年1回のスポット対応で完結できます。 顧問契約は必須ではありません。「今年の申告だけ」「課税事業者になった年だけ」というご依頼で問題なく、必要になったら顧問に切り替えることもできます。
領収書は整理されていなくて大丈夫です。 領収書・通帳・請求書をそのままお預かりし、記帳から申告書の提出まで行います。何を渡せばいいかは「税理士に確定申告を丸投げするとき、何を渡せばいい?」にチェックリストがあります。
代表税理士が直接担当します。 無資格の担当者に任せきりにせず、ご相談から申告まで代表が責任を持って対応します。LINEでのご相談にも代表本人が返信します。
freee・マネーフォワードの認定パートナーです。 すでにクラウド会計をお使いの方はデータ共有で、これから始める方は導入設定からご一緒します。弥生会計にも対応しています。
料金は、売上規模に応じた計算式で事前にお見積りします。 年商、記帳代行の有無、消費税申告の有無で金額が決まる仕組みなので、依頼後に想定外の請求が出ることはありません。料金表と計算例は「料金案内」をご覧ください。
事務所は横浜駅から徒歩11分ですが、資料は郵送やデータ共有でもやり取りできます。現在ほかの税理士に依頼中で切り替えを考えている方は、「税理士を変更する手順」も参考にしてください。
「個人事業主の税理士」に関するよくある質問
個人事業主ですが、確定申告だけを税理士に頼むことはできますか?費用はいくらくらいですか? A.できます。顧問契約を結ばず、年1回の確定申告のみを依頼するスポット契約は一般的です。費用は、記帳をご自身でするか税理士に任せるか、消費税申告があるかで変わります。一般に言われる目安は年5万〜20万円程度の幅で、売上規模や資料の状態で上下します。当事務所の料金は「料金案内」に計算式を掲載しています。
売上1,000万円以下の個人事業主でも、税理士をつける意味はありますか? A.取引が単純で会計ソフトで回っているなら、必須ではありません。ただ、インボイス登録をしている方は売上1,000万円以下でも消費税の申告があり、2割特例の終了後は計算方法の選択が必要になります。また、融資や法人化を考えている方、経理に時間を取られて本業に影響が出ている方は、売上規模にかかわらず頼む価値があります。
年の途中や開業初年度からでも依頼できますか?領収書が整理できていなくても大丈夫ですか? A.どちらも問題ありません。年の途中からでも、その年分の申告から対応できます。開業初年度は、青色申告承認申請などの届出の確認から始めるのがおすすめです。領収書は整理されていない状態でお預かりして、当事務所で記帳します。
個人事業主の確定申告・税務顧問のご相談は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「自分に税理士が必要か分からない」「確定申告だけ頼みたい」「課税事業者になったので一度見てほしい」など、どんな段階からでもお気軽にご相談ください。初回相談・お見積りは無料です。代表税理士が直接お話を伺い、スポットと顧問のどちらが合うかも含めてご提案します。無理な勧誘はいたしません。
事務所は横浜市西区、横浜駅から徒歩11分です。LINE・メール・お電話でのご相談にも対応していますので、ご来所いただかなくても進められます。
参考(一次資料)
- 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」(基準期間・特定期間の判定、適格請求書発行事業者は免除されない旨)
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」(65万円・55万円・10万円の要件)
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」(記帳義務の対象者、帳簿7年・書類5年の保存期間)
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)特設ページ」(対象者・適用期間)
- 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(PDF)(2割特例は令和8年分まで、令和9年分・令和10年分は3割特例)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」(開業届・青色申告承認申請書・簡易課税制度選択届出書などの提出期限)
- 国税庁「開業する場合」(税務手続の案内)(開業時に提出する届出書の一覧と期限)
- 国税庁 タックスアンサー No.2502「源泉徴収義務者とは」(給与支払事務所等の開設届出書は1か月以内)
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
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