遺産分割協議書の作り方|記載例・押印・印鑑証明と、税理士・行政書士に頼めること

横浜市で相続税申告サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、税理士・行政書士の岩本隆一です。
「相続人同士で分け方は決まったので、書面にしたい。自分で作れるのか」「記載例はあるのか」「税理士・行政書士・司法書士・弁護士の誰に頼めばいいのか」――遺産分割の話がまとまった段階の相続人の方から、よく受けるご相談です。遺産分割協議書は、法律で決まった様式はなく自分で作ることもできますが、相続税の申告・不動産の名義変更・預金の解約という三つの場面で「そのまま使える」内容になっていないと、作り直しや追加の書類が必要になります。
この記事では、遺産分割協議書の役割(相続税申告・不動産登記・預金解約で必要になる場面)、記載例と書き方のポイント(相続人全員・財産の特定・代償分割・押印・印鑑証明)、作成でつまずく点(相続人に未成年・海外在住・認知症の方がいる場合)、税理士・行政書士・司法書士・弁護士に頼めることの違い、申告期限との関係と分割が決まらないときの対応を解説します。本記事は2026年11月6日時点の民法・相続税法・行政書士法・司法書士法に基づいています。相続税申告全体の流れは「相続税申告の流れと10か月のスケジュール」、必要書類は「相続税申告の必要書類一覧」をご覧ください。
遺産分割協議書の役割相続税申告・不動産登記・預金解約で必要になる
遺産分割協議書は、相続人全員が「誰がどの財産を取得するか」に合意したことを証明する書面です。遺言書がない場合、または遺言書と異なる分け方をする場合に作成します。法律上、作成は義務ではありませんが、次の場面で提出を求められるため、実務上はほぼ必須です。
| 場面 | 提出先 | 協議書に求められること |
|---|---|---|
| 相続税の申告 | 税務署(申告書に添付) | 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使うには、分割が確定していることを協議書(または遺言書)で示す必要がある。相続人全員の署名と印鑑証明書を添付 |
| 不動産の名義変更(相続登記) | 法務局 | 不動産を登記事項証明書どおりに特定し、取得者を明記。相続人全員の実印と印鑑証明書。2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に申請 |
| 預貯金の解約・名義変更 | 各金融機関 | 口座を特定し、取得者を明記。金融機関所定の書類と併用。印鑑証明書は発行から3〜6か月以内を求められることが多い |
| 株式・投資信託の移管 | 証券会社 | 銘柄・数量の特定と取得者。証券会社所定の書類と併用 |
| 自動車の名義変更 | 運輸支局 | 車両の特定(車名・登録番号・車台番号)と取得者 |
一つの協議書ですべての場面に対応できるよう、財産の特定を各提出先の様式に合わせて正確に記載することが、作成時の最大のポイントです。
記載例と書き方のポイント
一般的な構成の記載例です(氏名・住所などは架空の例です)。
| 項目 | 記載例 | ポイント |
|---|---|---|
| 表題 | 遺産分割協議書 | — |
| 被相続人の特定 | 被相続人 ○○○○(昭和○年○月○日生)は令和○年○月○日に死亡したため、その相続人である△△△△、□□□□及び◇◇◇◇は、被相続人の遺産について協議を行い、次のとおり分割することに合意した。最後の本籍:○○県○○市○○町○番地/最後の住所:○○県○○市○○区○○1丁目2番3号 | 氏名・生年月日・死亡日・最後の本籍・最後の住所を戸籍・住民票の除票どおりに記載 |
| 相続人全員の明示 | (冒頭に全員の氏名を列記。相続放棄をした人は含めない) | 戸籍で確定した相続人全員。一人でも欠けると無効。法定相続情報一覧図があると確認が確実 |
| 不動産 | 第1条 相続人△△△△は、次の不動産を取得する。 (土地)所在 ○○市○○区○○一丁目/地番 ○番○/地目 宅地/地積 123.45㎡ (建物)所在 同所○番地○/家屋番号 ○番○/種類 居宅/構造 木造スレート葺2階建/床面積 1階 60.00㎡ 2階 50.00㎡ | 登記事項証明書の記載をそのまま写す(住居表示ではなく地番・家屋番号)。マンションは敷地権の記載も必要 |
| 預貯金 | 第2条 相続人□□□□は、次の預貯金を取得する。 ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号1234567 ゆうちょ銀行 通常貯金 記号○○○○○ 番号○○○○○○○○ | 金融機関名・支店名・種類・口座番号で特定。金額は相続開始日の残高を書いてもよいが、利息で変動するため「上記口座の預金全部(利息を含む)」とする書き方が一般的 |
| 有価証券・その他 | 第3条 相続人◇◇◇◇は、○○証券○○支店の口座(口座番号○○)に預託されている株式・投資信託の全部、及び自動車(車名○○、登録番号 横浜○○○ あ ○○-○○、車台番号○○)を取得する。 | 証券は口座単位で特定するか、銘柄・数量を列記 |
| 債務・葬式費用 | 第4条 被相続人の債務(○○銀行の住宅ローン残債務)及び葬式費用は、相続人△△△△が負担する。 | 債務の負担者を定める(対債権者には全員が法定相続分で責任を負うが、相続人間の負担割合として記載)。相続税の債務控除は負担者から控除 |
| 代償分割 | 第5条 相続人△△△△は、第1条の不動産を取得する代償として、相続人□□□□に対し金○○○万円を令和○年○月○日までに支払う。 | 不動産を一人が取得し他の相続人に金銭を払う場合は、必ず協議書に記載する。記載がないと代償金が贈与とみなされるおそれがある |
| 後日判明した財産 | 第6条 本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産は、相続人△△△△が取得する(または「相続人全員で別途協議する」)。 | 記載漏れの財産が出たときに再協議を避けるための条項 |
| 日付・署名・押印 | 上記のとおり協議が成立したことを証するため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえ、各1通を保有する。 令和○年○月○日 住所/氏名(自署)/実印 | 相続人全員が自署し実印を押す。住所は印鑑証明書どおり。複数ページは各ページの間に契印。相続人の人数分を作成 |
| 添付 | 相続人全員の印鑑証明書 | 登記用は発行日の制限なし、金融機関用は3〜6か月以内が多いため、提出先の数だけ取得 |
書き方で特に注意する点は、①相続人全員が参加していること、②財産を提出先の様式どおりに特定していること、③代償分割・債務の負担者を明記していること、④実印と印鑑証明書がそろっていること、の4つです。パソコンで作成して構いませんが、署名は自署が安全です。訂正は訂正印(実印)で行い、大きな訂正は作り直します。
作成でつまずく点未成年・海外在住・認知症の相続人がいる場合
- 相続人に未成年者がいる:親権者(親)も相続人である場合、親と子の利益が相反するため、親が子を代理して協議することはできません。家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、特別代理人が未成年者の代わりに協議書に署名押印します。申立てから選任までには一定の期間がかかるため、早めに着手します。
- 相続人が海外に住んでいる:日本の印鑑証明書が取れないため、日本国籍の方は現地の日本大使館・領事館で「署名証明(サイン証明)」と「在留証明」を取得し、協議書に署名します。署名証明には協議書と綴り合わせて証明を受ける形式と署名だけを証明する形式があり、どちらが必要かは提出先の意向によるため、事前に提出先に確認し、協議書を国際郵便で送って手続きする段取りを組みます。
- 相続人に認知症などで判断能力が十分でない方がいる:本人が協議の内容を理解できない状態で署名押印した協議書は無効になるおそれがあります。家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人を代理して協議に参加します。後見人は本人の法定相続分を確保する義務があるため、本人の取り分を減らす分割は原則として認められません。選任には数か月かかります。
- 相続人の中に行方不明の方がいる:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人が協議に参加します(分割には家庭裁判所の許可が必要)。
- 相続人の一人が協力しない・連絡がつかない:全員の合意がなければ協議書は作れません。話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。この段階は弁護士の業務領域です。
- 戸籍の確認漏れ:前婚の子、認知した子、養子など、把握していなかった相続人がいると協議書は無効です。被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確定し、法務局で法定相続情報一覧図を作っておくと、各提出先での戸籍の提示も簡単になります。
税理士・行政書士・司法書士・弁護士に頼めることの違い
協議書の作成と、その前後の手続きは、専門家ごとに扱える範囲が法律で決まっています。
| 専門家 | 頼めること | 頼めないこと |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告書の作成・提出、財産の評価、分割案ごとの税額のシミュレーション(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例・二次相続の影響) | 協議書の作成そのもの(税理士資格のみでは業務外)、登記申請、相続人間の交渉 |
| 行政書士 | 相続人間に争いがない場合の遺産分割協議書の作成(権利義務に関する書類の作成)、戸籍の収集・相続関係説明図の作成、金融機関・自動車の手続きの書類作成 | 相続人間に争いがある場合の交渉・代理(弁護士の業務)、不動産登記の申請(司法書士の業務) |
| 司法書士 | 相続登記(不動産の名義変更)の申請、登記に必要な協議書の作成、法定相続情報一覧図の作成 | 相続税申告、争いのある交渉 |
| 弁護士 | 相続人間に争いがある場合の交渉・調停・審判の代理、協議書の作成を含む法律事務全般 | (法律事務は全般に扱えるが、相続税申告は税理士登録をしているか、国税局長に通知して税理士業務を行う場合に限る) |
当事務所は税理士と行政書士の両方の資格で対応しているため、相続人間で分け方の合意ができている場合は、分割案ごとの相続税のシミュレーション → 遺産分割協議書の作成 → 相続税申告書の作成・提出を一つの窓口で進められます。不動産の登記は提携の司法書士をご紹介し、協議書は登記にも使える形で作成します。相続人間に意見の対立があり話し合いがまとまらない場合は、交渉や調停は弁護士の業務になるため、その段階で弁護士をご紹介し、合意ができた後の税務と書類作成を当事務所が担う形になります。
「分け方によって相続税がいくら変わるか」を先に確認してから協議書を作ることには大きな意味があります。たとえば、配偶者がすべて取得すれば今回の相続税はゼロに近くなりますが、二次相続で税負担が増えることがあります(「配偶者の税額軽減と二次相続を見据えた分け方」参照)。小規模宅地等の特例は、自宅を誰が取得するかで適用できるかが変わります(「小規模宅地等の特例の基本」参照)。協議書に署名した後で分け方を変えるには全員の再合意が必要になるため、税額を見てから署名するのが順序です。
申告期限との関係と分割が決まらないときの対応
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、原則としてこの期限までに分割が確定している財産にしか適用できません。協議書の作成は、申告書の作成と並行して、申告期限の1〜2か月前までに終えるのが目安です。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
- 期限までに分割が決まらない場合:いったん法定相続分で分割したものとして申告・納税します(未分割申告)。このとき、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は使えないため、税額は大きくなります。
- 「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する:未分割申告の際にこの書類を添付しておくと、申告期限から3年以内に分割が確定した場合、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をして、特例を適用した税額との差額の還付を受けられます。見込書を添付し忘れると、後から特例が使えなくなるため、未分割申告では必ず添付します。
- 3年を超えても分割できない場合:調停・訴訟などやむを得ない事情があるときは、3年経過後2か月以内に税務署長の承認を受ければ、さらに期間を延ばせます。
- 一部分割:合意できた財産だけ先に協議書を作り(一部分割)、残りを後日協議することも可能です。配偶者の自宅と預金だけ先に確定させ、特例を適用して申告する、といった使い方ができます。
- 納税資金:未分割の間は預金の解約ができず納税資金に困ることがあります。2019年7月以降、相続人は単独で預金の一部(相続開始時の残高×1/3×法定相続分、同一金融機関で150万円まで)を払い戻せる制度があります。
当事務所の相続税申告サポートでは、分割案の税額比較から協議書の作成、申告・納税、登記の司法書士との連携まで一括で対応しています。相続人の間で分け方の合意ができた段階、または合意に向けて税額の目安を知りたい段階でご相談ください。
「遺産分割協議書」に関するよくある質問
遺言書どおりに分ける場合は、協議書は不要で、遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を受けたもの、公正証書遺言はそのまま)を提出先に出します。遺言書に書かれていない財産がある場合はその財産について、また相続人全員が遺言と異なる分け方に合意した場合はその内容について、協議書を作成します。遺言執行者が指定されている場合は、執行者の同意も確認してください。
相続人が一人の場合、協議の相手がいないため協議書は作成しません。戸籍で相続人が一人であることを証明すれば、登記・預金解約・相続税申告のいずれも進められます。相続人が一人でも、被相続人の出生から死亡までの戸籍で他に相続人がいないことの確認は必要です。
協議書に「記載のない遺産・後日判明した遺産は○○が取得する」という条項があれば、その条項に基づいてその人が取得し、作り直しは不要です。条項がない場合は、見つかった財産について相続人全員で再度協議し、その財産についての協議書(追加の協議書)を作成します。相続税の申告後に見つかり、納める税額が増える場合は、修正申告も必要です。
提出先ごとに原本を求められることが多いため、相続税申告(税務署)、相続登記(法務局)、金融機関(各行)、証券会社の数だけ用意するのが安全です(返却に応じる提出先もあります)。法務局の相続登記と税務署への添付には発行日の制限はありませんが、金融機関は発行から3か月または6か月以内を求めることが多いため、金融機関の手続きの直前に取得します。
「遺産分割協議書の作り方」まとめ
- 協議書は相続税申告(特例の適用)・相続登記・預金解約・証券移管・自動車の名義変更で必要。一通ですべての提出先に使える内容で作る
- 記載は、被相続人の特定、相続人全員、不動産は登記事項証明書どおり、預金は金融機関・支店・口座番号、債務の負担者、代償分割の金額と期限、後日判明財産の条項、日付、全員の自署と実印、印鑑証明書の添付
- 未成年者は特別代理人、海外在住者は署名証明、判断能力に不安がある方は成年後見人、行方不明者は不在者財産管理人が必要。争いがある場合は弁護士(調停)
- 税理士は申告と税額比較、行政書士は争いのない協議書の作成、司法書士は登記、弁護士は争いのある交渉。当事務所は税理士・行政書士で税額比較→協議書→申告を一つの窓口で対応
- 申告期限(10か月)までに分割できなければ未分割申告+「3年以内の分割見込書」を添付し、分割後4か月以内に更正の請求。一部分割や預金の仮払い制度も使える
遺産分割協議書の作成と相続税申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「分け方は決まったので、税額を確認してから協議書を作りたい」「登記にも銀行にも使える協議書を作ってほしい」「申告期限が近いが分割がまとまらない」など、お気軽にご相談ください。税理士・行政書士の両資格で、分割案の税額比較から協議書の作成、申告・納税まで代表が直接対応します。登記は提携の司法書士をご紹介します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
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