税務調査後の再発防止|指摘事項を翌年以降に活かす経理ルールと税理士のかかわり方

横浜市で税務調査の対応と税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「税務調査が終わって修正申告をしたが、次に調査が来たときに同じことを指摘されたくない」「何から直せばいいのか」「顧問契約をすると何が変わるのか」――調査を終えた直後の経営者・個人事業主の方からのご相談です。調査で指摘された項目は、その事業で起きやすい誤りがどこにあるかを税務署が教えてくれたものと考えることができます。指摘を「ルール」に変換し、月次のチェックに組み込み、記録の残し方を決めておけば、次の調査は「説明で終わる調査」になります。
この記事では、指摘事項を経理ルールに変換する手順(売上の計上時期・経費の証憑・在庫・個人と法人の区分)、月次でやる最低限のチェック(残高照合・未処理の領収書・前年同月比較)、記録の残し方(議事録・契約書・按分根拠メモ)、更正の請求ができる場合と期限、顧問契約・月次サポートで変わることを解説します。本記事は2026年11月6日時点の国税通則法・法人税法・所得税法・消費税法に基づいています。調査結果に納得できない場合の手続きは「税務調査の結果に納得できないときは」、修正申告の住民税・国保への影響は「所得税を修正申告したら住民税・国保はどうなる?」をご覧ください。
指摘事項を「経理ルール」に変換する手順
調査の指摘は「この取引の処理が誤っていた」という個別の事実として伝えられますが、再発防止で必要なのは「同じ種類の取引をこれからどう処理するか」というルールです。指摘事項ごとに、①何が誤りとされたか、②なぜ起きたか(知識不足・記録不足・運用のずれ)、③今後のルール、④誰がいつ確認するか、を1枚にまとめます。典型的な指摘とルールの例です。
指摘事項ごとに次の4つを1枚にまとめます(例は売上の計上時期のずれの仮定例)。
| 指摘の種類 | よくある原因 | 経理ルールの例 |
|---|---|---|
| 売上の計上時期のずれ(期末前の納品・役務提供が翌期の売上になっていた) | 請求書の発行日や入金日で売上を計上していた | 売上は納品日・検収日・役務完了日のいずれかで計上する基準を決め、全取引に統一する。期末月は未請求の納品一覧を作る |
| 経費の証憑不備(領収書はあるが事業との関係が説明できない) | 領収書に目的・相手が書かれていない。レシートだけで内容が不明 | 飲食・贈答・交通費は、領収書に「日付・相手・目的・人数」をその場でメモ(または会計ソフトの摘要に入力)。1件5,000円超の飲食は参加者名を必須にする |
| 個人的な支出の混在 | 事業用と個人用のカード・口座が同じ。家族の支出が経費に入っていた | 事業専用の口座・カードに切り替え、個人の支出は一切通さない。家事関連費(自宅・車・通信)は按分率を決めて書面にする(「個人事業主の経費と家事関連費の按分」参照) |
| 社長個人口座への入金・役員貸付金 | 法人の売上が社長口座に入っていた。法人口座から社長の支出を出していた | 法人の入金先を法人口座に限定。社長の立替えは精算書で月1回精算し、役員貸付金残高は毎月ゼロか減少を確認(「法人の税務調査で社長個人の口座や役員貸付金はどう見られる?」参照) |
| 在庫の計上漏れ・過少 | 期末に実地棚卸をしていない。帳簿上の在庫と実際が合っていない | 期末日に実地棚卸を行い、棚卸表(品名・数量・単価・担当者・日付)を保存。年2回の棚卸で差異の原因を確認 |
| 外注費と給与の区分 | 実態は従業員なのに外注費として処理し、源泉徴収・消費税の扱いが誤っていた | 外注先ごとに契約書・請求書・独立性(他社との取引、道具の自己負担、時間拘束の有無)を確認し、判定の根拠を保存 |
| 消費税の課税区分の誤り | 非課税・不課税・課税の判定ミス、インボイスの保存漏れ | 取引先ごとの課税区分を会計ソフトのマスタに設定し、新規取引先の登録時に確認。インボイスは受領時に登録番号を確認して保存 |
| 源泉徴収漏れ | 報酬(講師料・デザイン料・税理士報酬など)の源泉徴収をしていなかった | 個人への支払は支払前に「源泉徴収の対象か」を確認するチェック欄を支払依頼書に設ける |
ルールは「書いて共有する」ことが重要です。経理担当者が変わっても同じ処理ができるよう、1〜2ページの経理ルール表にまとめ、会計ソフトの摘要欄や科目設定にも反映します。
(仮定例)売上の計上時期のずれを指摘された場合
(仮定例)3月決算の法人が、3月下旬に納品した商品の売上を、4月に請求書を発行した時点で計上していたため、税務調査で計上時期のずれを指摘され、修正申告をしたとします。原因は、請求書の発行日を売上の日付にしていたことでした。
再発防止として、①売上は納品日で計上する、②3月は月末時点で請求書を発行していない納品の一覧を作って売上に含める、③一覧は経理担当者が作り、決算時に社長と税理士が確認する、というルールを経理ルール表に書き、月次チェック表にも「期末月の未請求の納品」の欄を設けます。実際の事例ではありません。
月次でやる最低限のチェック
ルールを決めても、年に1回の決算で確認するだけでは誤りが積み重なります。月次で次の項目を確認すると、ほとんどの指摘事項は翌月までに発見できます。所要時間は慣れれば月30分〜1時間です。
- 残高照合:すべての銀行口座・カードの帳簿残高と実際の残高(通帳・明細)を月末時点で照合します。合っていれば、その月の入出金は漏れなく記帳されています。現金出納帳と手元現金も数えて合わせます。
- 未処理の領収書・請求書:受け取ったのに記帳していない領収書、発行したのに売上に計上していない請求書がないかを確認し、月内に処理します。「要確認」のまま放置している取引を税理士に質問して確定させます。
- 前年同月比較:売上・粗利・主要な経費を前年の同じ月と比べ、大きな差があれば理由を確認します。計上漏れ・二重計上・計上時期のずれは、この比較で見つかることが多いです。試算表の見方は「試算表の見方|経営者が毎月チェックする5つの数字」で解説しています。
- 役員貸付金・仮払金・立替金の残高:これらの科目に残高があれば内容を確認し、精算または振替をします。残高が増え続けている状態は、調査で最も指摘されやすい兆候です。
- 売掛金・買掛金の年齢調べ:長期間入金のない売掛金、支払いの済んでいない買掛金を確認し、回収・支払・貸倒れの判断をします。
- 指摘事項のチェック欄:調査で指摘された項目は、月次チェック表に専用の欄を設け、「今月は該当なし」を含めて確認した記録を残します。
月次チェックは、税理士と共有しているクラウド会計上で行うと、質問と回答が同じ画面で完結し、年末にまとめて直す作業がなくなります。
記録の残し方議事録・契約書・按分根拠メモ
調査で指摘されるかどうかは、「処理が正しいか」と同じくらい「正しいと説明できる記録があるか」で決まります。調査官は帳簿を見て疑問を持ち、説明を求めます。記録があれば説明で終わり、なければ推計や否認につながります。残しておく記録の例です。
| 記録 | 内容 | 残す場面 |
|---|---|---|
| 議事録 | 役員報酬の決定・改定、決算賞与、役員退職金、重要な契約、資産の取得・処分、貸付の条件 | 株主総会・取締役会のたび。一人会社でも作成する |
| 契約書・覚書 | 業務委託、賃貸借、金銭消費貸借(役員と法人の間も)、家族への給与の雇用契約、外注先との契約 | 取引の開始時。口頭の合意は書面にする |
| 按分根拠メモ | 自宅兼事務所の面積比、車の事業使用割合(運行記録)、通信費の使用割合、共通費の配分基準 | 按分率を決めたとき。年1回見直し、変更したら理由を記録 |
| 交際費・会議費のメモ | 日付・相手(会社名・氏名)・人数・目的 | 支出のたび。領収書の裏か会計ソフトの摘要に |
| 棚卸表・固定資産台帳 | 期末在庫の明細、資産の取得・除却の記録と写真 | 期末・資産の購入や廃棄のとき |
| 計上基準の文書 | 売上の計上基準、修繕費と資本的支出の判断基準、外注費と給与の判定基準 | ルールを決めたとき。経理ルール表として保存 |
| 税務署とのやりとり | 調査の指摘内容、修正申告の内容、提出した資料の一覧、調査官の氏名・所属 | 調査終了時。次の調査で「前回の指摘にどう対応したか」を示せる |
記録の保存期間は帳簿書類と同じ原則7年(欠損金の年度は10年)です。紙とデータのどちらでも構いませんが、探せる状態にしておくことが条件です。クラウド会計の取引に契約書・議事録のPDFを添付しておくと、調査のときに取引から直接根拠を示せます。
更正の請求ができる場合と期限
調査後の見直しの過程で、逆に「税金を多く払いすぎていた」ことに気づくことがあります。たとえば、調査で指摘された項目を直す際に、計上漏れの経費や使えたはずの特例が見つかる場合です。この場合は「更正の請求」で税金の還付を求めることができます。
- 期限:法定申告期限から5年以内(国税通則法23条1項)。調査後の修正申告で納めすぎた部分も、修正申告をした日から5年ではなく、もとの法定申告期限から5年が原則です。
- 修正申告後でも可能:調査の結果に基づいて修正申告をすると、その内容について不服申立てはできませんが、更正の請求は可能です(調査終了時の説明でもこの点が告げられます)。修正申告の内容に計算誤りや過大な部分があれば、更正の請求で直せます。
- 手続き:更正の請求書に、請求の理由と根拠となる資料(経費の領収書、特例の適用要件を示す書類など)を添えて税務署に提出します。税務署が調査して認めれば減額の更正が行われ、還付されます。認められない場合は「更正をすべき理由がない旨の通知」が届き、これに対しては不服申立てができます。
- 地方税への反映:所得税・法人税の更正があれば、住民税・事業税・法人住民税も連動して減額されます。消費税は別に更正の請求が必要です。
調査で指摘された「不足」だけを直して、「過大」に気づかないまま終わるのは損です。調査後の経理の見直しは、不足と過大の両方を洗い出す機会として使ってください。
顧問契約・月次サポートで変わること
再発防止のルールと月次チェックは、ご自身だけでも運用できますが、税理士と月次で共有すると次の点が変わります。
- 判断の即時化:「この支出は経費になるか」「この取引の計上時期はいつか」を、取引が起きた月のうちに確認して確定できます。年に1回の決算でまとめて判断すると、記憶が薄れ、証憑も探しにくくなります。
- 月次の残高照合と異常値の検出:税理士側で残高の不一致、役員貸付金の増加、前年同月比の異常を確認し、翌月に修正します。指摘事項のチェック欄を税理士が確認する形にすると、本人の負担が減ります。
- 記録の整備:議事録・契約書・按分根拠の作成時期を税理士が年間スケジュールに組み込み、「決めたのに書いていない」状態を防ぎます。
- 決算前の着地見込み:決算3か月前に利益と納税額の見込みを共有し、節税策と資金繰りを検討する時間を確保できます(「法人の決算スケジュール」参照)。
- 次の調査の対応:月次で共有していれば、調査の連絡が来たときに税理士が事業の実態と帳簿の経緯を把握しているため、準備が短期間で済み、調査当日の説明も一貫します。
当事務所の税務顧問サポートでは、調査後のご依頼の場合、最初の月に指摘事項を経理ルール表に変換する作業を一緒に行い、以後の月次チェックにその欄を設けて運用します。顧問契約が負担に感じられる場合は、四半期ごとのスポット確認から始める形も可能です。「税理士の顧問料と確定申告の料金」で、スポットと顧問の違いを解説しています。
「税務調査後の再発防止」に関するよくある質問
次の調査の時期は事業規模や業種、前回の結果によって異なり、一律に「何年は来ない」とは言えません。むしろ、指摘事項が多かった事業者は数年後に再度調査を受けることがあり、同じ指摘を繰り返すと加算税が重くなる(過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課された場合の加重)ほか、青色申告の承認取消しの原因にもなります。指摘を受けた直後が、記憶も資料もそろっていて最もルール化しやすい時期です。
直せます。法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求で計上漏れの経費を反映し、納めすぎた税金の還付を求めることができます。修正申告をしていても更正の請求は可能です。領収書や契約書など、経費の事実と事業との関係を示す資料を添えて提出します。税務署が確認して認めれば減額の更正が行われます。
ルールは多く作るほど守れなくなります。最初は、調査で指摘された項目に直結する2〜3のルール(たとえば「事業用口座・カードだけを使う」「飲食の領収書に相手と目的を書く」「月末に残高を合わせる」)に絞り、月次チェックの欄に入れて確認する形から始めてください。クラウド会計の自動取得と税理士との共有を使えば、本人の作業は「取引が起きたときの記録」だけになり、判断と確認は税理士側に寄せられます。
問題ありません。調査の指摘内容と修正申告の内容が分かる資料(指摘事項のメモ、修正申告書の控え、調査官とのやりとりの記録)を新しい税理士に渡せば、再発防止のルール化から引き継げます。税理士を変える手順と引き継ぎ資料は「税理士を変更する手順」で解説しています。
「税務調査後の再発防止」まとめ
- 指摘事項は「何が・なぜ・今後どうする・誰がいつ確認する」で経理ルール表に変換し、会計ソフトの設定と摘要にも反映する
- 月次の最低限のチェックは、残高照合・未処理の領収書と請求書・前年同月比較・役員貸付金等の残高・売掛買掛の年齢・指摘事項の専用欄。月30分〜1時間で回る
- 議事録・契約書・按分根拠メモ・交際費の相手と目的・棚卸表・計上基準の文書・税務署とのやりとりを残し、「正しいと説明できる記録」を作る
- 調査後の見直しで払いすぎに気づいたら、法定申告期限から5年以内に更正の請求。修正申告後でも可能で、地方税も連動して減額される
- 税理士と月次で共有すると、判断の即時化・異常値の検出・記録の整備・決算前の着地見込み・次の調査の準備が変わる。ルールは2〜3に絞って始める
税務調査後の経理の見直しと月次サポートは、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「指摘事項をルールにして、次は同じことを言われたくない」「月次で確認してくれる体制がほしい」「修正申告の内容に過大な部分がないか見てほしい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・法人を中心に、代表税理士が直接対応します。顧問契約だけでなく、四半期ごとの確認などスポットの形もご相談いただけます。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。
お電話でのご相談
045-900-6098
電話受付:平日9〜17時、土日祝・夜間は事前予約
横浜市地域密着・
スピード対応
横浜市全域対応
横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区
※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。







