家賃収入の無申告|不動産所得が税務署にわかる仕組みと、何年分さかのぼって申告するか

更新日:2026年11月7日

この記事の要点

  • 家賃収入は、支払調書・不動産登記・相続税申告・銀行口座など複数の経路から税務署に把握されます。
  • さかのぼる年数は原則5年分、偽りその他不正の行為がある場合は7年分です(国税通則法70条)。
  • 固定資産税・減価償却費・借入金利子などの経費を積み上げると、税額は想像より少ないことが多いです。
  • 相続した物件は、亡くなった親の年分(準確定申告・期限後申告)と、相続後の自分の年分を分けて整理します。

横浜市で無申告の解決サポートと不動産オーナーの確定申告をお引き受けしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「相続したアパートの家賃を何年も申告していない」「副業で区分マンションを貸しているが、確定申告をしたことがない」。こうしたご相談は、相続手続きが一段落した頃や、税務署から「お尋ね」の文書が届いた直後に集中します。不安の中心は「どこから分かるのか」「何年分か」「いくらか」の3点です。この記事では、その3点を一次資料で確認できる範囲で整理します。

家賃収入が税務署に分かる5つの経路

不動産は登記や課税台帳に所有者が記録される資産であり、家賃は毎月口座に記録が残る収入です。「個人同士の賃貸なら分からない」とはいえません。主な経路は次の5つです。

1. 借主や不動産会社が提出する「支払調書」

法人や不動産業者である個人が、個人の貸主に家賃・地代・更新料などを支払い、年間の支払額が15万円を超えると、「不動産の使用料等の支払調書」を税務署に提出する義務があります(所得税法225条)。事務所・店舗・社宅として法人に貸している場合や、不動産会社が物件を借り上げている(サブリース)場合は、貸主の氏名・住所・支払額が毎年税務署に届いています。借主が法人なら、その決算申告書に添付する「地代家賃等の内訳書」にも貸主の氏名・住所・支払額が記載されます。

2. 不動産登記と固定資産税の情報

不動産を取得すると登記され、市区町村の固定資産課税台帳にも所有者が登録されます。税務署は調査に必要があるとき、官公署に資料の閲覧や提供などの協力を求めることができます(国税通則法74条の12)。所有者の住所と物件所在地が異なる、建物の種類が共同住宅である、といった情報から「貸しているのではないか」という見立てが立ちます。

3. 相続税申告書に記載した財産の内容

相続税の申告書には、相続した土地・建物を「貸家」「貸家建付地」として記載し、家賃が振り込まれていた口座の残高も記載します。相続税の申告は「賃貸物件と家賃収入がある」と税務署へ自ら伝える手続きでもあり、亡くなった方の過去の申告や、相続人のその後の申告と照合されやすい経路です。

4. 銀行口座

税務署の職員には質問検査権があり、本人だけでなく、その人に金銭を支払う関係にある者(借主、管理会社、金融機関など)にも質問・検査を行えます(国税通則法74条の2)。いわゆる反面調査です。家賃は毎月同じ金額が同じ名義から入るため、通帳を見れば賃貸収入であることは明らかです。

5. 現地の確認や周辺からの情報

税務署は日常的に資料情報を収集しており、物件の外観や入居状況の確認、管理会社や入居者への問い合わせが行われることもあります。

何年分さかのぼって申告するのか|原則5年、不正があれば7年

税務署が「決定」できる期間は法定申告期限から5年

申告をしていない場合、税務署は「決定」という処分で税額を確定させます。決定ができる期間は、法定申告期限(原則、翌年3月15日)の翌日から5年間です(国税通則法70条1項)。偽りその他不正の行為によって税額を免れていた場合は7年間に延びます(同条5項)。実務ではこの期間を基準に申告する年分を整理し、2026年11月時点で原則の5年を当てはめると、おおむね令和3年分(2021年分)から令和7年分(2025年分)までが対象です。

「長年申告していなかった」という事実だけで自動的に7年になるわけではなく、売上を隠す工作や架空の経費など、具体的な行為の有無で判断されます。もっとも判断は個別性が高いため、何年分になるかは年分ごとに資料を確認して決めます。期間制限と徴収の時効の違いは「無申告に時効はある?」で詳しく解説しています。

住民税・国民健康保険料にも連動する

所得税の期限後申告をすると、内容は市区町村に送られ、住民税(所得割は原則10%)が課税されます。国民健康保険の加入者は、保険料も所得に基づいて再計算されることがあります。住民税をさかのぼって課税できる期間は地方税法で別に定められており、「無申告の住民税は把握される?」で整理しています。

経費を正しく積み上げると、税額は想像より少ないことが多い

不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算します(所得税法26条)。「家賃の全額に税金がかかる」と思い込んでいる方が多いのですが、課税されるのは経費を差し引いた後の所得です。

不動産所得の経費になるもの

  • 減価償却費(建物・設備の取得価額を耐用年数で配分。土地は対象外)
  • 固定資産税・都市計画税、損害保険料
  • 修繕費(原状回復や設備交換。資産の価値を高める支出は減価償却)
  • 管理費・修繕積立金、管理会社への委託料
  • 借入金の利子(元本の返済部分は経費になりません)
  • 入居者募集の仲介手数料・広告料、税理士報酬など

減価償却費は現金の支出がないため見落とされやすい経費です。相続した建物は、亡くなった方の取得価額・耐用年数・未償却残高を引き継いで計算します(所得税法60条、同施行令126条2項)。詳しくは「不動産オーナー・資産管理会社の確定申告」にまとめています。

青色申告特別控除は期限後申告では限定される

55万円・65万円の青色申告特別控除は、期限内に申告書を提出した場合に限って受けられます。期限後申告では、青色申告の承認を受けていても10万円控除までです。承認申請書を提出していない方は白色申告となり、控除はありません。今後の年分は、承認申請書を期限内(原則その年の3月15日まで)に出しておきましょう。

計算例(仮定):会社員が区分マンション1室を貸している場合

次の数字はすべて仮定です。給与と合算した課税所得が330万円超695万円以下(所得税率20%)の会社員が、令和5年分(2023年分)を2026年11月に自主的に期限後申告し、同日に納付したものとします。

項目金額(年間)
家賃収入(月15万円)1,800,000円
管理費・修繕積立金△240,000円
固定資産税・都市計画税△100,000円
損害保険料△10,000円
減価償却費△500,000円
借入金利子△250,000円
管理委託料△90,000円
修繕費△10,000円
不動産所得600,000円
納めるもの計算金額
所得税・復興特別所得税600,000円×20%=120,000円に復興特別所得税2.1%を加算122,500円
無申告加算税(調査通知前の自主申告)120,000円(1万円未満切捨て)×5%6,000円
延滞税(概算)120,000円に、法定納期限の翌日から納付日まで年2.4%・2.8%で日割り約8,200円
住民税(所得割)600,000円×10%(市区町村から別途通知)約60,000円
合計約197,000円

家賃収入180万円に対して、1年分の負担はおおむね11%です。延滞税は本税だけに日割りでかかり、期限後申告では申告書の提出日が納期限になるため、提出日に納付すれば低い割合(2026年は年2.8%)で計算が終わります。仕組みは「延滞税の計算方法」で確認できます。

なお、減価償却費や借入金利子が大きい年は不動産所得が赤字になることもあります。土地の取得に係る借入金利子の部分を除き給与所得と損益通算できるため、申告すると還付になるケースもあります(タックスアンサーNo.1391)。

相続で発覚するケース|亡くなった親の無申告と自分の申告

相続をきっかけに家賃の無申告が分かる場合、整理すべき年分は2つに分かれます。

亡くなった親の年分:相続人が引き継いで申告する

亡くなった方(被相続人)が申告していなかった年分の納税義務は、相続人が引き継ぎます。過去の年分は相続人が被相続人の期限後申告書を提出し、本税のほか加算税・延滞税も相続人が負担します。

亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得は「準確定申告」として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告・納税します。1月1日から3月15日までの間に前年分を申告しないまま亡くなった場合は、前年分も同じ4か月以内に準確定申告をします。相続人が2人以上いるときは、連署で提出する方法が基本です。

未納だった所得税は相続税の計算で債務として差し引ける一方、把握されていなかった家賃の預金は相続財産に加わります。相続税申告と並行して進める手順は「亡くなった親に無申告の収入があったら?」で解説しています。

相続後の自分の年分:遺産分割前の家賃は法定相続分で

相続開始後の家賃は、相続人自身の不動産所得です。遺産分割協議がまとまるまでの家賃は各相続人に法定相続分に応じて帰属し、後で分割が確定しても、未分割期間中の所得の帰属はさかのぼって変わりません。「物件を引き継いだ長男がまとめて申告すればよい」とは限らないのです。相続税の申告書に「貸家」と記載した以上、相続人の所得税申告に不動産所得が出てこなければ不自然ですから、相続税申告と所得税申告はセットで整えましょう。

申告の進め方と、税理士に頼む場合に用意する資料

進め方の流れ

  1. 対象年分と物件を整理する(相続があれば被相続人の年分と自分の年分を分ける)
  2. 家賃収入を復元する(通帳の入金、管理会社の送金明細、契約書)
  3. 経費を集計する(固定資産税通知書、保険料、修繕の領収書、返済予定表、減価償却)
  4. 年分ごとに本税・無申告加算税・延滞税・住民税を見積もる
  5. 期限後申告書を提出し、納付する(一括納付が難しければ納税の猶予や分納を相談)

調査通知を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税は原則5%です。調査通知後は10%〜25%、調査を受けた後は15%〜30%に上がります(タックスアンサーNo.2024)。法定申告期限から1か月以内なら加算税がかからない場合もありますが、要件は限定的です(「1か月以内の期限後申告で無申告加算税が不適用になる要件」)。複数年分の申告の順番や、住民税・保険料の通知が届く時期は「複数年分の無申告をまとめて申告する順番と注意点」で整理しています。

税理士に依頼するときに用意する資料

  • 賃貸借契約書(更新契約書、入退去の時期が分かる書類)
  • 家賃が入金されている口座の通帳または取引明細(なければ金融機関で再発行)
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書と課税明細書
  • 購入時の売買契約書・工事請負契約書(建物価格が分かるもの)、借入金の返済予定表
  • 損害保険の証券・領収書、修繕や管理費の請求書・領収書
  • 相続した物件の場合:相続税申告書、遺産分割協議書、被相続人の過去の確定申告書

資料がそろっていない年分があっても、取引履歴の取得や課税明細の確認で復元できることが多いです。手元にあるものから着手しましょう。無申告を解消するまでの手順全体は「無申告の解決手続き完全ガイド」もあわせてご覧ください。

「家賃収入の無申告」に関するよくある質問

Q1. 家賃収入が少額なら申告しなくてよいと聞きました。本当ですか?

A. 給与を1か所から受けていて、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要とされています(タックスアンサーNo.1900)。ただし20万円は家賃収入ではなく、経費を差し引いた「所得」で判定します。所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別に必要です。

Q2. 税務署から連絡が来てから申告するのと、自分から申告するのでは何が違いますか?

A. 無申告加算税の割合が違います。調査通知前の自主申告なら原則5%、調査通知後は10%〜25%、調査後は15%〜30%です。延滞税は日割りで増え続けるため、早く申告して納付するほど総額は小さくなります。

Q3. 古い年分の契約書や通帳が残っていません。それでも申告できますか?

A. 多くの場合、申告できます。金融機関で過去の取引明細を取得し、管理会社の送金明細や固定資産税の課税明細で裏付けを取れば、収入と主な経費は復元できます。領収書がない経費は計上できないこともありますが、放置するほうが加算税・延滞税の面で不利です。

家賃収入の無申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ

「相続したアパートの家賃を数年分まとめて申告したい」「副業の賃貸収入をどう申告すればよいか分からない」「税務署からお尋ねが届いた」など、お気軽にご相談ください。

無申告サポートは、資料の整理から年分ごとの税額見積もり、期限後申告・準確定申告の提出、納付計画まで、代表税理士の岩本が直接担当します。初回相談は無料、秘密は厳守します。LINEでのご相談も可能で、事務所は横浜駅から徒歩11分です。対応内容と料金は「無申告・期限後申告サポート」のページでご確認ください。

本記事は一般的な制度の説明です。具体的な対応については、必ず税理士にご相談ください。

参考(一次資料)

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

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