医療法人設立の要件・流れ・費用|神奈川県(横浜市)の認可スケジュールと申請の時期

更新日:2026年11月7日

この記事の要点

  • 医療法人の設立要件は「人(社員3人以上・理事3人以上・監事1人以上)」「施設」「財産(運転資金2か月分以上など)」の3つ。認可権者の手引きに沿って審査されます。
  • 神奈川県・横浜市の認可申請は年2回(春・秋)。2026年秋の素案受付は終了し、次回は2027年5月6日〜14日(予定)。申請から認可まで約6か月かかります。
  • 横浜市内だけで診療所を運営する法人の認可権者は、神奈川県ではなく「横浜市(医療局医療安全課)」です。
  • 設立登記の登録免許税はかからず、定款認証も不要。費用の中心は専門家報酬と、設立後の社会保険料です。

横浜市でクリニック・歯科医院の税務と医療法人設立のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

医療法人は、株式会社のように思い立った日に設立できる法人ではありません。神奈川県も横浜市も認可申請の受付は年2回だけで、1回逃すと法人としての診療開始が半年ずれます。この記事では、設立の要件、神奈川県・横浜市の2026〜2027年の認可スケジュール、申請から診療開始までの流れ、費用、設立前後の税務を、「いつから何を始めればよいか」が分かる順番で整理しました。法人化すべきかどうかの判断材料は「医療法人化のメリット・デメリットと横浜市での手続きの流れ」にまとめています。

① 医療法人設立の要件:人的要件・物的要件・財産要件

現在、新たに設立できる医療法人は「持分なし」の社団医療法人(基金拠出型を含む)です。個人クリニックの法人化で問題になる要件は、次の3つです。

人的要件:社員3人以上、理事3人以上、監事1人以上

  • 社員:最高意思決定機関「社員総会」の構成員です。横浜市の手引きでは「原則として、拠出(寄附)は1名以上、社員は3名以上」とされ、院長とご家族で構成するケースが多いです。
  • 理事:医療法第46条の5により「理事3人以上及び監事1人以上」が原則。理事長は医師または歯科医師である理事から選び(同法第46条の6)、診療所の管理者(院長)は理事に加えなければなりません。
  • 監事:理事・職員との兼務はできず、他の役員と親族等の特殊な関係にない人を選びます。業務と財産を監査して毎年「監査報告書」を作る役割のため、数字を読める第三者が望ましいです。
  • 役員の任期は2年以内(再任可)です。常時1〜2人の医師が勤務する診療所1か所のみの法人には、知事(市長)の認可で理事を1〜2人にできる特例がありますが、原則は3人です。

物的要件:診療所の施設・設備

土地・建物は「法人所有が望ましいが、長期間にわたる確実な賃貸借契約があれば賃借でもよい」とされています。テナント開業なら、貸主から法人名義への契約切替えの承諾を得ておきます。医療機器や内装は、個人から法人へ「拠出」する形で引き継ぎます。

財産要件:運転資金2か月分以上と、引き継げる負債

  • 運転資金:開設当初に必要な「2か月分以上の運転資金」を預貯金などで拠出することが求められます。
  • 負債の引継ぎ:個人時代の借入金やリース債務は、原則として拠出する医業用資産の取得に伴うものに限って引き継げます。金融機関の残高証明書と「引継承認願」が申請書類になるため、早めに金融機関へ相談してください。

資産・負債の棚卸しや監事の人選など申請前に整えることは「医療法人設立の準備チェックリスト」で詳しく解説しています。

② 神奈川県・横浜市の認可スケジュール:年2回、申請から認可まで約6か月

認可権者は「神奈川県」か「横浜市」か

医療法第44条は認可権者を「主たる事務所の所在地の都道府県知事」としていますが、神奈川県内では横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市が、市内に主たる事務所と事業所がある医療法人を自ら所管しています。横浜市内だけで診療所を運営する法人なら、申請先は横浜市医療局医療安全課。市外に分院を置く場合などは神奈川県(健康医療局医療企画課)です。

2026〜2027年の受付・認可予定

神奈川県と横浜市の日程は、県・市の公式ページ(2026年7月31日更新)で次のとおり公表されており、両者はほぼ同じ日程で動いています(2026年春の列は横浜市の公表分です)。

ステップ2026年春の申請(終了)2026年秋の申請(審査中)2027年春の申請(予定)
財産目録の基準日2026年3月31日2026年7月31日2027年3月31日(予定)
設立総会の開催2026年4月1日以降2026年8月1日以降未公表
申請書(素案)の提出5月7日〜5月15日8月28日〜9月8日5月6日〜5月14日(予定)
事前審査(個別面談)5月18日〜7月24日9月9日〜11月9日未公表
本申請(申請書類の提出期限)8月24日12月7日未公表
医療審議会11月上旬〜中旬2027年2月上旬〜中旬未公表
認可(予定)11月中旬〜12月中旬2027年2月中旬〜3月中旬未公表

県・市ともに「上記の日程は一応の目途であり、変更される可能性があります」としています。2027年春の詳細は受付開始の約1か月前に公表される予定ですので、2027年3月以降に県・市のページを必ず確認してください。

逆算すると、準備開始は素案提出の半年前

秋の申請なら翌年4月、春の申請なら年末〜年始に法人として診療を始めるのが標準的なパターンです。素案の時点で定款、財産目録、2年間の事業計画・予算書、役員の履歴書などがそろっている必要があるため、準備は素案提出の半年前には始めたいところです。

例(仮定):横浜市内の個人クリニックが2027年春の申請を目指すなら、2026年12月〜2027年2月に損益シミュレーションと監事の人選、3月31日時点で財産目録を整理、4月に設立総会、5月に素案提出という流れです。例年どおりなら認可は2027年11〜12月、法人としての診療開始は2027年12月か2028年1月が目標です(実際の事例ではなく、公表済みの日程と例年のパターンから組んだ想定です)。

③ 設立の流れ:事前相談から個人診療所の廃止まで

  1. 事前相談・準備:県・市の担当課に認可権者と日程を確認し、拠出資産・負債の整理、役員・社員の人選、定款案の作成を進めます。
  2. 申請書(素案)の提出:受付期間内に素案一式を提出します(神奈川県は持参、横浜市は持参または郵送)。
  3. 事前審査(個別面談):担当者の審査と設立代表者との面談を経て、修正指示が出ます。もっとも時間がかかる工程です。
  4. 本申請:修正を終えた正式な申請書類を期限までに提出します。
  5. 医療審議会・認可:医療審議会の意見聴取を経て、認可書が交付されます。
  6. 設立登記:認可の日から2週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局で設立登記を行います。登記完了日が法人の成立日で、登記後は遅滞なく「登記事項届」を県・市に提出します。
  7. 診療所の開設手続:法人は医師ではないため、医療法第7条の「診療所開設許可」が必要です(横浜市は保健所設置市なので市長の許可)。許可後に開設し、10日以内に開設届を提出。あわせて関東信越厚生局神奈川事務所へ保険医療機関の指定申請を行います。
  8. 個人診療所の廃止:法人診療所の開設と同じタイミングで、個人診療所の廃止届(廃止後10日以内)を提出します。

認可後は「登記→開設許可→保険医療機関指定」が連続します。保険診療の請求に空白が出ないよう、厚生局の指定日を見据えて開設日を決めるのが実務上のポイントです。

④ 医療法人設立の費用:登録免許税は0円、中心は専門家報酬

項目金額の目安備考
設立認可申請の手数料なし神奈川県・横浜市の案内に手数料の記載はありません
定款の認証(公証役場)不要定款は認可権者の認可を受けるため、株式会社のような認証手続はありません
設立登記の登録免許税0円登録免許税法の課税対象(別表第一)に医療法人の登記は掲げられていません
書類取得などの実費数千円〜数万円登記事項証明書・印鑑証明書・残高証明書の手数料、法人実印の作成など
行政書士報酬(認可申請書類の作成・提出)数十万円〜100万円程度拠出資産・負債の内容や分院の有無で幅があります
司法書士報酬(設立登記)10万円前後〜事務所により異なります
税理士報酬(シミュレーション、財産目録・予算書の数値面、税務届出)事務所により異なります当事務所はお見積り無料です

専門家報酬は一般的な幅で、依頼範囲によって大きく変わります。

設立時より重要なのが、毎年かかるコストです。法人になると院長・スタッフの社会保険(健康保険・厚生年金)が強制適用になって法人負担分が発生し、法人住民税の均等割も所得がなくても年7万円程度(神奈川県2万円+横浜市5万円、標準税率の最低区分の場合)かかります。「法人化で節税になる」かは、これらを差し引いて判断します。

⑤ 税理士・行政書士・司法書士の役割分担と、設立前後の税務

専門家担当する業務
行政書士定款・設立趣意書・事業計画書など認可申請書類の作成と提出、事前審査の対応
司法書士設立登記、その後の役員変更・資産総額変更の登記
社会保険労務士社会保険の新規適用、スタッフの資格取得・喪失手続
税理士法人化の損益シミュレーション、財産目録・予算書の数値面、個人の最終確定申告、法人の税務届出と決算

個人側:最終の確定申告と廃業の届出

個人診療所を廃止した年は、1月1日から廃止日までの事業所得について翌年3月15日までに最後の確定申告を行います。法人へ引き継ぐ医療機器の譲渡所得など、通常の年より検討事項が多くなります。「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出期限は、国税庁の案内では「廃止の日の属する年分の確定申告期限まで」です。青色申告の取りやめ届出書、消費税の事業廃止届出書、予定納税の減額申請もあわせて確認します。詳しくは「個人クリニックの確定申告」と「法人成りの手続き」をご覧ください。

法人側:設立届、役員報酬、社会保険、消費税

  • 税務署への届出:法人設立届出書は設立登記の日から2か月以内。青色申告の承認申請書は、設立の日から3か月を経過した日と第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで。給与支払事務所等の開設届出書と源泉所得税の納期の特例の申請も忘れずに。
  • 役員報酬:理事長・理事の報酬は「定期同額給与」として事業年度開始から3か月以内に決め、原則として期中は変えません。決め方は「医療法人の理事長・理事の役員報酬」で解説しています。
  • 社会保険:法人事業所は事業主のみでも厚生年金保険・健康保険の強制適用です。医師国保を継続する場合は、健康保険の適用除外承認の手続を医師国保組合の案内に沿って進めます。
  • 消費税:社会保険診療は非課税、自由診療や物販は課税です。持分なし医療法人には資本金がないため設立1期目・2期目は免税となるケースが多いですが、特定新規設立法人の規定やインボイス登録の要否は個別に判定します(「医療法人の消費税」)。
  • 決算後の届出:毎会計年度終了後2か月以内に事業報告書等を作成し、監事の監査を受けて県・市に届け出ます(「医療法人の決算後に必要な届出」)。

⑥ 当事務所のサポート範囲:法人化の損益シミュレーションから設立後の税務顧問まで

  • 法人化の損益シミュレーション:直近2〜3期の決算書・申告書をもとに、役員報酬の水準、社会保険料の法人負担、個人と法人を合わせた税額と手取りを比較し、「法人化する・しない」「するならどの申請回か」を数字で判断できるようにします。
  • 申請書類の数値面:財産目録、負債の引継ぎ、2年間の予算書・事業計画の数字を、決算書と整合する形で作ります。
  • 設立後の税務顧問:税務届出、役員報酬の設計、決算・申告、事業報告書等の作成支援まで一貫して対応します。MS法人の活用も、「おすすめしないケース」を含めてご説明します。
  • 認可申請から設立後まで窓口を一本化:認可申請を含む設立サポートとしてお引き受けします(内容と料金は医療法人・クリニックサポートのページをご覧ください)。設立登記は提携の司法書士と連携します。

事務所は横浜市西区平沼、横浜駅から徒歩11分です。横浜市内はもちろん、神奈川県内のクリニック・歯科医院からのご相談もお受けしています。

「医療法人設立」に関するよくある質問

今から準備を始めると、最短でいつ法人として診療を始められますか?

A. 2026年11月時点で次の受付は2027年5月6日〜14日(予定)の素案提出です。例年のパターンどおりなら認可は2027年11〜12月、法人としての診療開始は2027年12月〜2028年1月が目安です。2028年4月開始を目指すなら、2027年秋の申請になります。

社員や監事は、家族や顧問税理士に頼んでもよいですか?

A. 社員は院長のご家族で構成するケースが多く、問題ありません。監事は理事・職員との兼務ができず、他の役員と親族等の特殊な関係にない人を選ぶ必要があります。法人と利害関係のある人は避けるのが原則で、顧問税理士が監事を兼ねる場合は、独立性の観点から慎重な検討が必要です。人選は事前審査でも確認されるため、早めにご相談ください。

費用を抑えるために、認可申請を自分でやることはできますか?

A. 制度上は可能です。ただし神奈川県は説明会を開催しておらず、素案提出から事前審査までの約2か月間に細かな修正指示が複数回あります。診療と並行して対応する負担は大きく、1回の受付を逃すと半年ずれます。少なくとも財産目録・予算書の数値面は専門家の確認を受けることをお勧めします。

医療法人の設立は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「法人化して本当に手取りが増えるのか数字で確かめたい」「2027年春の申請に間に合わせたい」「設立後の役員報酬や社会保険、消費税が不安」など、医療法人設立に関することなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。初回相談・お見積りは無料です。クリニック・歯科医院に特化した当事務所のサービス内容は、医療法人設立サポート・クリニックの税務顧問のページでご確認いただけます。

参考(一次資料)

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。

お電話でのご相談

045-900-6098
電話受付:平日9〜17時、土日祝・夜間は事前予約

横浜市地域密着・
スピード対応

横浜市全域対応

横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区

※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。

個人クリニックの確定申告|概算経費の特例(措置法26条)・青色申告・自由診療の消費税

個人クリニックの確定申告|概算経費の特例(措置法26条)・青色申告・自由診療の消費税

横浜市でクリニック・歯科医院の税務をサポートしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 「概算経費の特例というものがあると聞いたが、うちは使えるのか」「自由診療や健診の収入に消費税はかかるのか」「青色申告にした・・・...

あわせて読みたい
設立初年度の役員報酬の決め方|定期同額給与・いつまでに決める・社会保険料とのバランス

設立初年度の役員報酬の決め方|定期同額給与・いつまでに決める・社会保険料とのバランス

横浜市で会社設立と設立後の税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 「役員報酬はいくらにすればいいのか」「いつまでに決めないといけないのか」「売上が読めないのに決められない」「社会保険料が思ったよ・・・...

あわせて読みたい
融資のために確定申告書・納税証明書が急ぎで必要|e-Taxの受信通知・納税証明書の取り方と日数

融資のために確定申告書・納税証明書が急ぎで必要|e-Taxの受信通知・納税証明書の取り方と日数

横浜市で急ぎの確定申告と融資に必要な書類の準備をお手伝いしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 「融資の審査で確定申告書と納税証明書を出すよう言われたが、何をどこで取ればいいのか」「納税証明書は何日かかるの・・・...

あわせて読みたい
お問い合わせ