税務調査で税理士が代理人として行うこと|税務代理権限証書・調査官対応の範囲・納税者本人が答える場面

税務調査で税理士が代理人として行うこと|税務代理権限証書・調査官対応の範囲・納税者本人が答える場面

横浜市で税務調査の立会い・対応サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「税理士に立会いを頼むと、具体的に何をしてくれるのか」「調査官の質問には税理士が答えてくれるのか、自分も答えるのか」「全部任せてしまってよいのか」――税務調査の連絡を受けて税理士への依頼を検討している方から、必ずと言ってよいほど受けるご質問です。税理士が調査で行えることは税理士法で決まっており、「できること」と「納税者本人でなければできないこと」の境目を知っておくと、当日の役割分担が明確になり、調査がスムーズに進みます。

この記事では、税理士法2条が定める税務代理・税務書類の作成・税務相談の範囲、税務代理権限証書と「調査の通知に関する同意」「代表する代理人」の記載の意味、調査当日の役割分担(事実関係は納税者、法令解釈・主張は税理士)、税理士が同席しても納税者本人が答える必要がある場面、調査後(修正申告・更正・不服申立て)で税理士が行うことを解説します。本記事は2026年11月6日時点の税理士法・国税通則法と国税庁の税務代理権限証書の様式に基づいています。事前通知の内容と日程調整は「税務調査の事前通知で伝えられる項目」、依頼のタイミングと費用は「税務調査の連絡が来たら税理士にいつ依頼する?」をご覧ください。

税理士が行える業務の範囲税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法2条)

税理士法2条1項は、税理士の業務を次の3つと定めています。これらは税理士(税理士法人)の独占業務で、資格のない人が有償・無償を問わず業として行うことはできません。

業務内容税務調査での具体例
税務代理(1号)税務官公署に対する申告・申請・請求・不服申立てについて代理・代行すること、および税務官公署の調査や処分に関して主張・陳述を代理・代行すること調査の日程協議、調査への立会い、調査官への説明・主張、修正申告書の提出、更正処分への不服申立て
税務書類の作成(2号)申告書・申請書・届出書などを作成すること調査後の修正申告書・期限後申告書、更正の請求書、各種届出書の作成
税務相談(3号)税額の計算や申告・主張の内容について相談に応じること調査前の論点整理、指摘事項の妥当性の検討、修正に応じるか争うかの助言

税務代理のうち調査に関する部分が「立会い」です。税理士は納税者の代理人として、調査官に対して納税者の立場から事実の説明と法令上の主張を行い、調査官の指摘に反論し、修正申告の内容を協議します。一方で、税理士は納税者の代わりに「事実を作る」ことはできません。実際に行った取引の経緯や、現金の管理の実態、ある支出が事業のためか個人のためかといった事実は納税者本人しか知らないため、ここは本人が答える領域になります(後述)。

国税不服審判所の公表裁決:税理士でない第三者の立会いを求めた事例

令和3年6月23日の裁決は、税務調査に税理士資格のない第三者4名を立会人として同席させた個人事業者の事案です。調査担当職員は守秘義務を理由に、立会人がいない状態で帳簿書類を見せるよう繰り返し求めましたが、事業者は応じず、税務署は取引先の調査をもとに推計で所得を計算し、消費税の仕入税額控除も認めずに更正処分をしました。

審判所は、税理士資格のない第三者の同席を認めなければならない法令の規定はなく、退席を求めたことには合理的な理由があるとして、推計の必要性と仕入税額控除を認めない判断を支持しました(1年分は推計の計算を見直して一部取消し)。立会いを頼む相手が税務代理のできる税理士かどうかは、事前に確認しておきたい点です。

出典:国税不服審判所「令和3年6月23日裁決」

税務代理権限証書と「調査の通知」「代表する代理人」「意見聴取」の記載の意味

税理士が税務代理をするときは、委任を受けていることを示す「税務代理権限証書」を税務署に提出します(税理士法30条)。申告書に添付するか、調査が決まってから単独で提出します。様式には調査に関係する次の欄があります。

  • 調査の通知に関する同意:この欄に同意の記載があると、調査の事前通知は税理士に対して行えば足りることになります(国税通則法74条の9第5項)。税務署からの最初の電話が税理士に入り、納税者は税理士経由で連絡を受けます。記載がない場合は、納税者本人と税理士の双方に通知されます。
  • 代理人が複数ある場合の代表する代理人の定め:複数の税理士に委任している場合、代表する税理士を定めておくと、通知や調査終了時の説明はその税理士に対して行えば足ります。
  • 調査終了時の説明:調査の結果(更正決定等をすべきと認める場合の説明、修正申告の勧奨)は納税者本人に対して行われますが、納税者の同意があれば税理士に対して行うこともできます(国税通則法74条の11第5項)。実務では税務代理権限証書の提出に加え、調査の過程で税理士への説明に同意する形がとられます。
  • 書面添付と意見聴取:税理士が申告書に「計算事項等を記載した書面」(税理士法33条の2)を添付している場合、税務署は調査の事前通知を行う前に、その税理士に意見を述べる機会を与えなければなりません(税理士法35条)。意見聴取で疑問点が解消すれば、実地調査が省略されることもあります。書面添付は申告書に添付して提出する制度で、書面だけを後から提出できるのはその申告書の法定申告期限内に限られるため、調査の連絡が来てから過去の申告書に付けることはできません。

税務代理権限証書は、調査の対象となる税目・年分を記載して委任の範囲を示します。調査の途中で対象税目が追加された場合(源泉所得税・印紙税など)は、委任の範囲を追加する手続きをとります。

調査当日の役割分担事実関係は納税者、法令解釈・主張は税理士

調査当日、税理士が同席していても、質問への回答は「誰が答えるべき内容か」で分かれます。一般的な分担は次のとおりです。

調査官の質問・要請主に答える人理由・注意点
事業の内容、取引の流れ、取引先との関係、売上の入金方法納税者本人事業の実態を知っているのは本人。税理士は補足説明をする
現金の管理方法(レジの締め、金庫、個人の財布との区別)納税者本人日々の運用の事実。曖昧な答えは「管理ができていない」と受け取られるため、事前に整理しておく
特定の支出が事業のためか個人のためか、誰と行ったか納税者本人事実の問題。税理士は「事業関連性の判断基準」を補足する
帳簿の記載方法、会計処理の根拠、計上時期の考え方税理士(記帳を担当している場合)処理の理由と法令上の根拠を説明
税法の解釈(この取引はこう課税されるべき、この特例の適用要件)税理士法令・通達・判例に基づく主張。調査官の見解に反論する場面
指摘事項に対する反論、修正の範囲の協議税理士事実と法令を踏まえた交渉。本人は税理士と相談して方針を決める
資料の提示、追加資料の提出時期税理士が窓口何をいつ出すかを整理し、無関係な資料まで出さないように管理
質問応答記録書への署名・押印納税者本人の判断署名は義務ではない。内容を確認し、事実と異なる記載があれば修正を求める(「質問応答記録書への対応」参照)

税理士の役割を一言で言えば、「本人が事実を正確に伝えられるように整え、法令の解釈と主張を引き受け、調査官とのやりとりを整理すること」です。具体的には、①調査前に論点と資料を整理し、本人が答えるべき事実の確認(予行練習)を行う、②当日は質問の意図を本人に補足し、事実と異なる方向に話が進んだら軌道を戻す、③調査官の指摘に対して法令上の根拠を示して反論する、④調査官の口頭の指摘を書面やメモで整理し、本人と対応方針を協議する、という動きになります。

注意したいのは、税理士が本人の代わりに事実を「推測で」答えることはできない点です。本人が知らない・覚えていない事実は「確認して回答します」とし、その場で曖昧に答えないことが重要です。当事務所の税務調査サポートでは、調査前の予行練習を2回行い、本人が答える事実と税理士が引き受ける論点を分けておく進め方をとっています。

税理士が同席しても納税者本人が答える必要がある場面

「全部任せたい」というご希望は多いのですが、次の場面は本人の対応が必要です。

  • 調査初日の概況の聞き取り:事業の内容、創業の経緯、従業員の構成、取引先、1日の業務の流れ、売上と仕入の流れ、現金の管理などを、調査官は本人から聞きます。通常は初日の午前中に1〜2時間程度で、ここで事業の実態を把握します。調査官は本人に質問することができるため(国税通則法74条の2)、本人が不在で税理士だけが説明する形にしたい場合は、事前に調査官と協議してください。
  • 事実関係の確認:特定の取引や支出について「これは何ですか」「誰と」「なぜ」と聞かれたとき。本人の記憶に基づく回答が求められます。資料を見て確認したうえで答えて構いません。
  • 現金・現物の実査:レジや金庫の現金、在庫、店舗や事務所の状況の確認には、本人(または責任者)の立会いが必要です。
  • 質問応答記録書:調査官が本人の回答を文書にまとめ、署名を求めることがあります。署名するかどうか、記載内容を修正するかは本人の判断で、税理士は内容の確認と助言を行います。
  • 修正申告に応じるか、争うかの最終判断:調査の結果、修正申告の勧奨を受けたとき、応じるか、更正処分を受けて不服申立てをするかは本人が決めます。税理士は見込みとリスクを説明します。

一方、本人が常に同席する必要はありません。初日の聞き取りと実査が終わった後の帳簿の精査(2日目以降や、資料を税理士事務所で確認する場合)は、税理士だけで対応し、必要なときに本人に確認する形が一般的です。本人の時間を最小限にしつつ、事実の確認には本人が応じる、という組み合わせになります。

調査後に税理士が行うこと修正申告・更正・不服申立て

実地調査が終わると、税務署は調査結果を説明します(国税通則法74条の11)。申告に誤りがなければ「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が送られ、誤りがある場合は指摘内容(金額・理由)の説明と、修正申告の勧奨が行われます。この段階以降で税理士が行うことは次のとおりです。

調査結果の説明を受けた後の選択

誤りを指摘されたら、修正申告に応じるか、更正処分を受けて争うかを本人が決めます。

修正申告に応じる税理士が修正申告書を作成・提出します。本税は提出日に納付し、その内容について不服申立てはできなくなります(更正の請求は可能)。
更正処分を受けて争う応じなければ税務署が更正処分をします。納得できなければ、処分を知った日の翌日から3か月以内に再調査の請求か審査請求をします。
どちらを選ぶかは本人の判断です。税理士は指摘内容を検証し、見込みとリスクを説明します。
出典:国税通則法74条の11・75条・77条。本文の説明を図にまとめたものです。
  • 指摘内容の検証:調査官の指摘が事実と法令に照らして妥当か、金額の計算が正しいか、加算税の区分(過少申告加算税か重加算税か)が適切かを確認します。重加算税の指摘に対しては、仮装・隠蔽の事実がないことを主張する場面が多くあります(「重加算税の基準」参照)。
  • 修正申告書の作成・提出:指摘に納得して修正申告をする場合、税理士が修正申告書を作成し、代理で提出します。修正申告をすると、その内容について不服申立てはできなくなるため(更正の請求は可能)、提出前に内容を本人と確認します。地方税・消費税への影響も同時に整理します(「所得税を修正申告したら住民税・国保はどうなる?」参照)。
  • 更正処分への対応:修正申告に応じない場合、税務署が更正処分を行います。処分の内容を確認し、納得できなければ再調査の請求(税務署長に対して、処分を知った日の翌日から3か月以内)または国税不服審判所への審査請求を行います。これらの手続きも税務代理の範囲で、税理士が代理人として書面の作成・主張を行います(「税務調査の結果に納得できないときは」参照)。
  • 納税と加算税・延滞税の確認:修正申告による本税の納付期限は提出日です。加算税・延滞税の通知が届いたら、計算を確認します。一時に納付できない場合の猶予の申請も税理士が行えます。
  • 再発防止の経理ルール:指摘された項目を翌期以降の経理ルールに落とし込みます。進め方は「税務調査後の再発防止」で解説します。

調査の終了時の説明は、納税者の同意があれば税理士に対して行われます。説明の場に本人が同席できなくても、税理士が内容を確認して本人に報告し、対応方針を協議する流れになります。

「税務調査における税理士の役割」に関するよくある質問

A.初日の概況の聞き取りと現金・現物の確認では、本人(法人なら代表者または事業の内容を説明できる責任者)への質問や立会いが求められることがあり、不在にしたい場合は事前に調査官との協議が必要です。事業の実態を知っているのは本人であり、税理士が代わりに推測で答えることはできません。初日以降の帳簿の精査は税理士だけで対応し、必要なときに本人に確認する形にできます。本人の拘束時間を減らす組み方は事前に相談してください。

A.問題ありません。新たに依頼する税理士が税務代理権限証書を提出すれば、調査の立会いと以後の対応を代理できます。ただし、申告書の作成経緯や会計処理の理由は作成した税理士が把握しているため、可能であれば前の税理士から資料と処理の説明を引き継ぎます。前の税理士との契約が続いている場合は、立会いの範囲を調整します。

A.税理士が行うのは、事実と法令に基づく主張です。調査官の指摘が事実と異なる、法令の解釈に誤りがある、必要経費として認められる根拠がある、重加算税の要件(仮装・隠蔽)に当たらない、といった点を主張し、結果として修正の範囲や加算税の区分が変わることはあります。一方、根拠なく税額を値切るような交渉はできませんし、事実と異なる説明をすることもできません。「正しい税額で終わらせる」ことが税理士の役割です。

A.税理士資格のない人が、納税者の代理として主張・陳述を行うことを業として行えば、有償・無償を問わず税理士法に違反します。従業員(経理担当者)が事実関係の説明をすることは問題ありませんが、代理人として調査官と協議することはできません。国税庁のFAQでも、調査で納税者に代わって主張・陳述できるのは原則として税務代理人とされ、それ以外の第三者の立会いは断られることがあります。

「税務調査で税理士が代理人として行うこと」まとめ

  • 税理士の業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法2条)。調査では日程協議、立会い、主張・反論、修正申告書の作成、不服申立ての代理まで行う
  • 税務代理権限証書に「調査の通知に関する同意」を記載すれば通知は税理士へ。代表する代理人の定め、調査終了時の説明の同意、書面添付による意見聴取の制度もある
  • 当日の分担は、事業の実態・取引の経緯・現金管理・支出の性質など事実関係は本人、帳簿処理の根拠・法令解釈・指摘への反論・資料提出の管理は税理士
  • 初日の概況聞き取り・現金実査・質問応答記録書への署名判断・修正申告に応じるかの最終判断は本人が行う。2日目以降の帳簿精査は税理士だけで対応できる
  • 調査後は指摘の検証、修正申告書の作成(提出後は不服申立て不可)、更正処分への再調査の請求・審査請求、納税と加算税の確認、再発防止のルール化を税理士が担う

税務調査の立会いと調査後の対応は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「調査の立会いを頼みたい」「自分が答えるべきことと任せられることを整理したい」「指摘内容が妥当か確認してほしい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・法人を中心に、代表税理士が直接立ち会います。顧問契約は不要で、調査のみのスポット対応も可能です。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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